オールブラックスはやってくれました。かなりマッコウや監督にはプレッシャーのあった1週間が続いた後、そんなこともあったのが嘘に思えるような爽快に、そして圧倒的に強い勝ち方でオーストラリアを倒してくれました。
先週のゲームとは全く違うゲームプランで、そして選手の集中力もすごかったと思えます。強いオールブラックスが戻ってきたように思えます。さすがにリチャード・マッコウの存在はすごい。彼のプレイ自体もとてもすごかったのですが、彼が入ったことによりソイアロやカイノのプレイも本来の姿を取り戻し、またアリ・ウィリアムスの動きもいつもにも増して動き回れるようになり、どの攻撃の場面にも顔を出し、またブレイクダウンでのマッコウの働きからハーフバックのジミー・コーワンは相手からプレッシャーを掛けられる前に余裕を見てアタックの起点を作り出すことが出来たように思えました。
このゲームでは上記の二人=アリ・ウィリアムスとジミー・コーワンは最高のゲームだったでしょう。またムレアイーナとカーターはいつものように、そしてゲームプランにあったいい働きが見られました。
このゲームではヘンリー監督も言っていたように新試験的ルールに沿ったキックプレイを多用し、そしてそれを効果的に使うことで先週のゲームでは相手が見せたテリトリーを終始支配することが見られました。全体的には6割を支配でき常にプレッシャーを掛けられました。この攻撃的プレッシャーはこれまでのオールブラックスには常に見られたのですが、今回のゲームでは新ルールをやっと首脳陣も上手く獲り入れより効果的に使えていたように思えます。
これまでは自陣でボールを獲ると22m内からでもボールを回してどんどん攻め上がっていたのがこのゲームでは先週のゲームからの反省からかそれが全く見られず、カーターやムレアイーナが相手デフェンスラインの裏やがら空きのスペースやまた22m内の深いところのサイドラインまで蹴りこむのが非常に効果的でした。だからか?今日は先週カーターが自らラインブレイクして走りこんで行く姿は一度も見られませんでした。最終的な記録ではABがこの日獲得したキックによる陣地は1187mに対してワラビーズのそれはほぼ半分の664mとなりました。
またこのゲームでテリトリーを支配できプレッシャーを掛け続けることが出来たのはやはりそのデフェンスの出来が良かったことでしょう。これまた先週ワラビーズが見せたプレッシャーのきついデフェンスはこの日はオールブラックスのものでした。特にマット・ギットウに対してカーターが常にきついプレッシャーを与えるところは気迫が感じられました。
このゲームでこのようにギットウにプレッシャーが掛けられ、ギットウがなかなか上手く攻撃の基点を組めないと言うこと。そしてスクラムやラインアウトなどのセットプレイできついプレッシャーを掛けることでハーフバックや12;ベリック・バーンズが先週と比べて全然攻撃参加する姿が見られませんでした。そしてこのゲームでワラビーズが最も最低だったのはラインアウトで最初のトライはこのラインアウトからの素晴らしいセットプレイから生まれましたが、そのフッカーが後半50分にベンチに下がり控えが出てきてからも全くいいところが無くボロボロでした。
やはりワラビーズもロッキー・エルソムがいないことが大きいのか?どうしてもラインアウトのジャンパーが減ってしまい、オールブラックスにとってもターゲットを絞りやすい状況でした。ましてアリ・ウィリアムスは最高の動きを見せました。この日オールブラックスがワラビーズのラインアウトからボールを奪ったのが8に対してワラビーズは0と言う結果です。
この日は大雨、強風ということが予想されたのですが、ちょうどゲームの時間帯だけその狭間に入ったようで雨は降りませんでした。しかしゲーム前は誰もがオールブラックスがこのゲーム負けたらどうなるのか?ワラビーズは調子に乗っていいところを見せるのではないかと言う思いがあったと思います。しかしこの雨の心配も無くなり、勝利に突き進む気持ちをより一層高めたのはゲーム直前に行われた新しいハカ=Kapa O Pangaでした。やっぱりこっちのほうが戦う気持ちが断然観客にも伝わり逆境にも勝てそうな気持ちになりこの日のゲームにはぴったりでNZの国民の気持ちが現れたようにも思えました。
しかしAUSのキックオフからゲームが始まるとその気持ちも現実に戻されAUSは攻め込みます。ただこの日は最初からブレイクダウンからボールを出すのが遅い。いつもならテンポよくブレイクの後もつないで前進してくるのですが、今日は最初からABにデフェンスラインを引かせる時間が出来ました。
またAUSが攻め込む際にギットウが先週は上手く行ったキックプレイを見せます。中央からサイドラインに向けキックをあげティキリかモートロックを走らせる戦法ですが、最初は少し大きすぎて上手くいかない。先週も初っ端にこのプレイを見せ勢いに乗れたようだけど今週もまたこれをやるなんて、ましてこの日後2回も同じ事をやるのはギットウのことを思えば少し白ける気分になりました。
けれど2分には攻め込んだ結果は出て、先行の3点はワラビーズに上がります。この辺りは先週のゲーム内容が頭にちらつきましたが、カーターからのキックオフ後はやはりABは先週のゲームプランとは変えてきているのが分かります。3分にすぐに同点に追いついた後はカーターとムレアイーナが自陣から効果的なキックでボールをAUS陣地に運び、すぐさま押せ押せムードになります。そして12分には22m内でのAUSペナルティーで6-3となります。
その後AUSも猛攻を仕掛けてきますが、カーターがその気持ちをすかすようにハイパントやゴロでボールをAUS陣の中に返していきます。そして17分にはこれまたカーターの視野の広いことからがら空きになった相手陣地の左隅に向け自陣22m付近から逆風にもかかわらずキックでボールを送ります。
そしてAUSゴールライン手前8mほどのAUSラインアウトで成功したら奇襲になっていただろうと思わ
れるフッカーがラインの整わないうちに目の前のハーフバックにボールを投げ入れるのですが、これがサイドラインから5m離れていなかったために易々とABにボールを渡します。そしてABはスクラムを選択するのですが、一度スクラムが崩れた際AUSの3;アル・バクスターに対してレフリーから注意が与えられていました。
これが効果あったのかABはこのスクラムからスムーズにボールが出されるとABはAUSゴールラインに流れ込みゴールライン手前のブレイクダウンとなります。そして2度ゴールライン直前のブレイクダウンから抜け出た1;トニー・ウッドコックが一歩下がったところでボールを受け、そしてギットウの足元に低く突っ込みトライをとります。この最初のトライはどうしてもABは獲りたかったと思います。
そして勢いに乗ったABはAUSからのキックオフ後今度はジミー・コーワンが効果的な小さなキックで相手陣地に入り込みます。2度目に自陣10mほどのブレイクダウンの裏から蹴り出されたキックボールは左サイドライン際を転がり、転がり、ゴールラインをきりそう、サイドラインをきりそうだけどきらなくて、15;アダム・アシュレークーパーは否応無くボールを獲ったのはちょうど左コーナポストの手前。これでABの5mラインアウトになります。
この5mラインアウトから見せたABのセットプレイはもうBeauty!!の一言。フッカーからボールが投げ込まれると同時に先頭にいたトニー・ウッドコックが後ろに回りこみます。ボールはアリ・ウィリアムスに投げ入れられますが、これをウィリアムスはバックスに流すのではなく目の前、足元に走りこんできたウッドコックに上からパス。これを受けたウッドコックは隙間の出来たABラインを抜け、また同じく隙間の出来たAUSラインをすり抜けゴールラインに流れ込みトライ!。すごいきれいなトライとなりました。ウッドコックは長年のテストマッチ経験上これまでAUS相手にだけ2つしかトライをとったことが無いのですが、この日はこれで2つ追加するトライを5分間の間に獲ったことになります
これで18-3となりますが、AUSも気を引き締め逆襲に出ます。ギットウのキックイプレイでAB陣地深く入った後28分に右サイドラインからのラインアウトからこれまたセットプレイですが、AUSが良く見せるセットプレイですが、相手ながらもこれまたとてもきれいなトライが生まれます。ラインアウトから出されたボールを9番ー10番とすぐに回し、ギットウが横に広がりながら走り込むモートロックにパス。これにコンラッド・スミスもデフェンスに入るのですが、スピードに乗るモートロックはスミスのタックルを難なくすり抜けラインブレイク、もうこの時点でトライは決まったような感じ。モートロックにタックルが入ってもまだ横には15;アダム・アシュレークーパーが余った状態で走りこんできている。アシュレークーパーがパスを受けるとそのまま誰にも邪魔されること無くゴールポスト下まで走りこみタッチダウン。これで18-10となります。
ここで流れを持ち込みたいAUS側でしたが、ABはスクラム、ラインアウト、そしてブレイクダウンなどで踏ん張って、自陣に入り込まれたらすぐに相手陣地にキックボールで返しプレッシャーを掛け続けます。そして相手陣地内でそのプレッシャーから生まれるペナルティーをカーターがキックで得点に結びつけ前半は21-10で終わります。
11点差がつきましたが、後半もどちらが先にトライをとるかで流れが変わると思われました。ABはここでキックオフ後相手陣地に入るとボールを保持し続けることでプレッシャーを掛け続けます。そして大事なトライはノムの素晴らしい集中力から生まれました。
22mライン内まで攻め込んでAUSラインアウトとなりますが、このラインアウトでもプレッシャーを掛けAUSがボールを獲りますが、バックスに上手くボールをつなげられない。ハーフバックがボールを獲るところに強烈なマッコウによるタックル。こぼれたボールを拾ったのが2;アンドリュー・ホー、彼はすぐさま横に展開するコンラッド・スミスにパスを出しますが、上手いパスにはならずスミスはボールを後ろにこぼす。これを拾うのがマアア・ノム。ノムはボールを拾うとギットウのタックルをハンズオフで交わしながら更に突進。そしてWingのシティベニ・シティバツにパスを出します。ノムは倒され、またシティバツもパスを受けたところにスポットタックルが入り後ろにボールを出します。これを獲ったのが倒された後すぐさま起き上がったノム。ノムがボールを獲るとここは自分で行かねば!と言った感じで横にコンラッド・スミスがいましたが、ゴールラインに向け流れ込み左隅にトライをとります。このラインアウトからトライが生まれるまでは一瞬の出来事でしたが、ノムの気迫みたいなのが十分分かりました。
この後のカーターのコンバージョンも左端からでしたが見事に決まり28-10.そしてABはデフェンスをしっかりと固め、がっちりとした強烈タックルでAUSのバックス陣の突進を止めます。そしてAUSのラインアウトの失敗を続ける事も手助けになってAUSには後半得点のチャンスを与えませんでした。
56分にペナルティーキックをカーターが決めて31-10という安全圏に入ってからはABもどんどん控えを出して行き、最終的にはピリ・ウィープも含めた控え全員を出す余裕まで見られました。そして終了サイレンがなった後に獲ったノムによるトライ含めて4トライをこの日は獲って戦前には予想が出来なかった39-10というこの両者の対戦としては大差がついてのオールブラックスの勝利となりました。
これでオールブラックスはAUSと争っているブレデスローカップの保持、そして南アフリカを含めたトライネーションのカップの保持に望みを繋ぎました。けれどオールブラックスのホームゲームはこれが今年最後。この後南アフリカと1戦、オーストラリアと香港戦を含めると2戦残しており、どちらのカップもまだまだどこが獲るかは分からない状態が続きます。
2008年8月3日日曜日
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