アイルランドの新しいスタジアムはとても素晴らしいもので8万2千の満員の観客を集めましたが歴史的初勝利をオールブラックスからは奪うことは出来ませんでした。
その大歓声はすごいものでしたが、ダニエル・カーターがペナルティーキックを蹴るときなど普通大ブーイングが起こるはずがこの日は不気味なほど静かにカーターのキックを見守っているような誰もがアイルランドの活躍を期待しながらもオールブラックスの強さを見に来ているようなゲームでした。
こんなこともあってかカーターにとっては簡単に思われたキックを2本外すこともありましたが、カーターは期待通りそのアタックでのブレイク、そしてデフェンスタックルで素晴らしいところを見せました。またマアア・ノム、シティベニ・シティバツ、久しぶりの先発だったムレアイーナ、この日の最優秀選手に選ばれたアリ・ウィリアムスなどが強い働きを随所に見せ付けました。
ただこの日の審判は主審、線審そしてビデオ判定も南アフリカのものでそろえられたので私には見慣れた感じでしたがアイルランドサポーターにはやや不公平と思われてもおかしくない判定などがあったと思うのは私だけでしょうか?それでも結構観客からの野次から判定が促されたものもありました。
このゲームでの得点はオールブラックスが3トライ、アイルランドがノートライとまたもや後半に掛けて得点を重ねていき、デフェンスをきつく固めて相手に付きいる隙を与えないまま勝ってしまうと言うこの北半球遠征始まってから3ゲーム連続で後半には1点も与えない内容でなんだかこのまま今年は突っ走っていきそうな感じです。
最終的な得点は22-3となりましたが、実は前半はほとんど3-3で終わってもいいぐらいの内容が続き前半はアイルランドのデフェンスもしっかりとしたもので均衡状態といってもいい感じでした。オールブラックスも前半はミスも多く、相手陣地でのペナルティーも多かったのですが、アイルランドはそれ以上に大事なところでミスを犯したり、最後の詰めが甘かったりして波に乗れないまま終わった感じです。
ABはキックオフ開始から猛ダッシュを掛けます。キックオフボールを蹴り上げようとするアイルランドのローナン・オガラに対してジミー・コーワンが猛烈なチャージでボールをはたき出すところから始まります。ここからもういきなりオールブラックスの流れになるのですが、アイルランドも必死に守ります。
またオールブラックスは今日相手陣地でのマイボールのラインアウトではアリ・ウィリアムス、ジェロモ・カイノ、そしてプロップ2人の4人でのショートラインアウト体制を貫きました。そしてアタックラインの中央にブラッド・ソーンを置き、彼にボールが回るとソーンがセンターのような役割でラインにガンガン突っ込んで行く。これが最初のラインアウトから見られ、このソーンの突込みがまた気持ちのいいぐらいに強烈。
しかしこのラインアウトから出されたボールがアタックラインの二人目ぐらいにボールが回るころにはさすがにあがりが早いアイルランドデフェンスラインに固められてどうしてもサイドライン側にボールが押しやられる展開がABは前半よく見られました。ABのその早いボール回しにもそしてマアア・ノムやコンラッド・スミスなどが突っ込んでくるのも十分硬いラインを引いてアイルランドは守っていました。
キックオフ後から続くABの攻撃に耐えていたアイルランドも3分にブレイクダウンでペナルティー。カーターなら簡単に決められるだろうと思っていたのが35mほどのやや左からのペナルティー・キックをわずかにゴールポスト右側へと外します。
ここから両軍の激しい攻防が続き瞬く間に時間は過ぎていきます。それだけ動きが激しく攻守の交代が行われたのですが、お互い相手22m内までにはなかなか入れない。そして23分にラックでアイルランドがペナルティーを犯しアイルランド陣地ほぼ中央からのキックをまたもや、まさかのカーターが今度はわずかに左に外します。
この辺りはアイルランドサポーターも元気よく大歓声が絶えません。けれど攻撃の流れはオールブラックスがまだ握ったまま。シティベニ・シティバツがセンターラインから力強いラインブレイクで22mラインを超えたところでアイルランドがペナルティー。今度はゴールポストほぼ正面の22mだからカーターも外すことなくやっとこの日最初の得点が付きます。時間は25分。
この後のアイルランドのキックオフからアイルランドもオガラなどが大きなキックを多用して攻め込んできますが、ABのバックス陣の処理も崩れることなく決定的な得点チャンスにいたることさえ出来ません。しかし37分にやっとAB陣地にわずかに入ったところでABがペナルティーを犯しこれをオガラが距離はありましたが見事にキックで決めて3-3とします。この辺り観衆としてはまだまだ見込みはあるといった感じでした。
この後前半終了まで2分ほどでカーターのキックオフ後もややアイルランドに流れが行きそうで,ABの攻めを守り通すかなと思われたのですが、ここで今日のゲームを決める出来事が起こります。時計が40分を指したところでオドリスコルが蹴り上げたボールを自陣10mほどのところで受けたジミー・カーワンから最後の攻めとばかりにボールを繋ぎながら全員がアイルランド陣地に流れ込みます。あっという間に22mラインまでまで達して、右サイドから中央へとパスが素早く回されノムにボールが渡っところでノムは前進しながらも左サイドに開いたスペースに向けゴロのキックボールを転がします。これに突っ込んできたのがリチャード・マッコウでしたが、ゴールラインほんの手前でマッコウがボールに触れるかどうかというところにアイルランドの14;TommyBoweが横から突っ込んで来てボールをはたきだします。
一瞬トライが免れたと思われましたが、マッコウはすぐに両手を挙げてアピール。線審の目の前で行われたことでしたが、一旦ビデオ判定となった結果、これはペナルティートライとなります。そして14;TommyBoweの行為はボールを取りに入ったのでも、押さえに入ったものでもないはじき出しに故意に行ったということでイエローカードが出されます。
これで10-3と前半は終了し、後半はアイルランド14人で最初10分戦わなければならないようになったのですが、この日の南アフリカ勢ばかりの審判で行われたゲームでは観客からの野次がきつかったのか、41分になんでもないところでトニー・ウッドコックが相手を殴ったことを線審が主審に申告しウッドコックはイエローカードを出され、ABも14人になってしまいます。
このペナルティーをアイルランドはセンターライン上からのペナルティーキックを選択。後半14人で始まったと思ったらウッドコックの退場でイーブンになって流れを変えられそうだったと思ったのですがプロップのいなくなったにもかかわらずスクラムを選ばずオガラのキックに掛けました。
しかしこのペナルティーキックを頼みのオガラはわずかに外してしまいます。そしてこの後からは逆にABが猛攻を仕掛けてきます。
まず22m内のドロップオフのボールがキックボールで返された後カーターが自陣22mライン超えたところからキックを上げるフェイントを小さく入れた後デフェンスを突っ切って相手陣地に走りこみます。アイルランド陣地10mラインを超えたところで右横のジミー・カーワンにパス。カーワンは走りこみながらも更に右側に走りこんできていたアリ・ウィリアムスにパス。アリの前には誰もいなかったのですが、さすがにロックの彼。22mライン超えたところで相手のデフェンス2人に追いつかれます。一旦足が止まるアリ・ウィリアムスでしたが、この2人のタックルが甘くて倒されないとなるとまた前進を続けてゴールラインに飛び込みます。けれど飛び込んだときにはデフェンスタックルが4人になっていてタッチダウンできたか主審も回りこんで見てましたが分からずビデオ判定の結果タッチダウンできてないこととなりアイルランドボールのスクラムに変わります。
アイルランドは何とかスクラムでもがんばって一旦は危機をまぬがれサイドラインにボールを蹴り出しますが、このスクラムで5;PaulO’Connellが足を痛めます。
ABボールの右側ラインアウトから一旦ボールは左サイドに回されますが、すぐにラックからのボールはジミー・カーワンから中央のカーターへそしてマアア・ノムに出されます。そして後ろからジョー・ロコソコが走りこんできたのですが、ノムとロコソコの前にいるのが足を引きずりながらのオコーネルで、オコーネルはロコソコにボールが渡ってもタックルできず、ましてロコソコがラインブレイクした後回り込んで走りこんでくるノムにも何も出来ずにノムはロコソコからの上手いパスを受けてぽっかりと開いたデフェンスラインを抜けてゴールポスト下ヘトライをとります。
これで17-3。一気にABが攻勢に乗ってきます。両軍はまだ14人ずつの48分。アイルランドは何とか食い下がろうと攻めてきますが、最後の詰めが甘い。ABのデフェンスが強い。50分になって15人に戻ったアイルランド陣地22mライン上のアイルランドラインアウトからの攻めも強いデフェンスでボールを奪うと素早く攻めに転じるAB。
そしてボールを展開し始めるととても早くて上手くボールが回る。ボールを回しながらもどんどん前に進んでくるのでサイドからサイドへとボールが渡ると大体陣地の半分は奪ってしまう。このボールを展開するときも途中ダミー入れたり入れなかったりしてデフェンスとしてもターゲットを絞れない。まして間にダミーを入れての飛ばしパスも長くて速いものが多用され、これがまた上手く繋がる。
相手ラインアウトからボールを奪って攻めに転じると素早く左から右端に繋がれ、相手22mライン内でラックが出来る。このラックからのボールがまた素早く出されて再びバックスが今度は左端へと回す。ジミー・カーワンからカーターへ、そしてシティベニ・シティバツとボールが大きなパスで回されるのですが、このあたりまでアイルランドもラインデフェンスがついていける。しかしシティバツより更に左サイドラインよりにまだ2人も余っていたりするとデフェンスも足りなくなる。
左サイドラインよりに走りこむブラッド・ソーンに向けかなり大きなパスが渡ると前にはシンビンから戻ってきたばかりの14;TommyBoweだけの2対1となる。こうなるとリーグで磨かれたブラッド・ソーンはステップを切ることなく、横にパスを出すことなく、まして頭を下げて飛び込んでいくことなくそのまま真っ直ぐ相手にぶち当たりながら、デフェンスを押し倒してトライをとってしまいました。爽快な強烈トライとなって得点差はあっという間に19点差が付きこれでゲームは決まったような感じになりました。
その通りこの後25分ほどはABの攻め、そして守りも強くてアイルランドはいいところを見せられないまま封じ込められ終わってしまいました。
オールブラックスはこの調子のまま来週のウェールズ、その後のイングランドも粉砕していきそうです。
アイルランド 3-22 オールブラックス (前半:3-10)
2008年11月16日日曜日
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