2009年8月24日月曜日

8/24 オールブラックスvsワラビーズ 第2戦 観戦記

 さすがに伝統の一戦、ましてお互い負けられない一戦となったこのゲーム、すごいゲームでした。最後の最後まで勝敗が分からない。そして展開が激しく変化する面白いものでもありました。両軍の選手は全力で80分間疾走したような内容。終盤に掛けて見ているほうもどんどん前のめりで見てしまうゲームでした。

 お互い南アフリカに沈められた欠点を修正するゲームでもありましたが、さすがにその点は見直しがされ、つけ入る隙を与えなかったと思えます。またお互いランニングラグビーを目指し、キックボールに頼ることなく展開ラグビー、そして昔のタイプのパワーラグビーで勝負してきたことから見ているほうにとっても十分面白いものに映りました。

 まずオールブラックスの意気込みはゲーム開始前とゲーム開始直後にしっかり表されます。この日のハカの先導はマッコウが行います。これには少しビックリ。けれど意気込みが分かります。それに対していつもなら球場全体で大合唱となってイヤな雰囲気になるあのウォーチングマチルダが歌われないままなんだかワラビーズへの期待感が薄いような雰囲気でゲームが始まります。

 そしてワラビーズキックオフでのターゲットはまずマッコウ。ハイボールへのキャッチが問題になっていたオールブラックスもこのマッコウが猛烈なチャージを掛けてきた6.ロッキー・エルソムに空中で体当たりを食らってもしっかりボールをこぼさないことでなんだかこのゲームは大丈夫という想いが出る。

 そしてABの意気込みは最初のアタックからも見られます。12.ルーク・マクアリスターが自陣から上げられた小さなキックボールに対してすばやく、そして猛烈ダッシュで相手に襲い掛かります。彼はタックルに入った際相手の頭と彼のあごがぶつかりグランドに倒れこみ、口の中を流血してしまいます。けれどその迫力は誰にも伝わる姿でした。

 この後すぐにワラビーズはボールを展開してAB陣地を目指しますが、オフサイドがあって早速この日誰もが注目のダニエル・カーターのキックの場面が訪れます。彼は38mほどの距離のキックをCOOLに決めてくれます。これでなんだかオールブラックスのゲームになりそうだという思いが出ましたが、すぐにそんな考えは甘い物だったということが分かります。

 ワラビーズキックオフの後すぐにAB陣地22m内まで入り込んでラック内で6.ジェロモ・カイノがペナルティーを取られ、10.マット・ギットウがすぐさま蹴って3-3の同点にして、その後9分にもラックのペナルティーからあっさり逆転して6-3となります。

 10分以降はお互い同じような攻め、守りで激しい攻防が繰り広げられます。少しABのほうがアタックでは優勢に立つのだけれどもワラビーズの的確で強いプレッシャーとタックルの守りにパスミスが出たりハンドリングエラーが出ます。

 その中でこの日の勝敗を決める要因にもなった選手交代のことに関わるスクラムでABはまたしてもワラビーズのそれを圧倒します。特に長年お互いぶつかり合ってきたABの1.トニー・ウッドコックとワラビーズの3.アル・バクスターの勝負は完全にウッドコックが勝り、何度もスクラムを押し込んでいきます。そして監督のロビー・ディーンは前半30分という早めにバクスターをベンチに下げます。代わりに出てきた17.BenAlexanderは最後の差後に大きなミスを犯してしまう結果となります。

 15分以降からはABがどんどんボールを回して攻め、ワラビーズが守りながらも押し上げてくる展開が続きます。そのテンポがとても速くて、ボールの奪い合いがとても激しい。この攻防は互い相手の22mラインまでにはなかなか入れずセンターラインをはさんでの攻防が続きます。そして33分にセンターライン近くでABがペナルティーを取られたことに対して主審に文句を言った事から10m罰退されて、ギットウには十分ゴールを狙える射程距離となってワラビーズが点差を広げる9-3となります。

 この後すぐにABは更なる猛攻に入ってワラビーズ陣地22m前まできますが、ブレイクダウンでカイノがペナルティーを取られ、またその直後のシティバツから始まるカウンターアタックもカーターをマクアリスターのところでパスミスが出てトライに繋がりそうなアタックの流れをことごとくワラビーズの執拗な守りに阻まれます。

 そして前半終了間際のAB猛攻の際にコンラッド・スミスがハムストリングスを痛め、パスボールを受け損ない相手にボールを奪われると、この前半では唯一といって良いワラビーズのトライチャンスが前半終了のサイレンが鳴ると同時に訪れます。

 コンラッド・スミスが落としたボールを拾った13.アダム・アシュレー・クーパーがカウンターアタックでAB陣地10mまで駆け上がり、ボールを回すワラビーズ。10mライン上でペナルティーを得てもすぐさま連続攻撃を仕掛け、ベリック・バーンズが上手くラインブレイクして22mライン内へ入り込む、そして上手く後ろからサポートに来た5.ネイザン・シャープにパスが繋がり、シャープの前には9.ジミー・コ-ワンだけという1対1になり、その先にゴールポストという状態になりますが、コーワンのきれいなタックルが決まりトライを許さない。しかしコーワンはシャープを倒した後も続けてボールを奪おうとしたことからペナルティーを取られます。これによって前半はワラビーズが9点差をつける12-3で結局終わります。

 後半に入る際、怪我をしたコンラッド・スミスに代えマアア・ノヌが、そしてワラビーズはベリック・バーンズが怪我をしてライアン・クロスと交代します。これでワラビーズはゲームメイクと、キッカーとしてはギットウだけを頼ることになります。

 後半入ってもABが攻め立て、ワラビーズが守るという状況は変わらなかったのですが、ABにとっては得点のチャンスがすぐに訪れます。41分にABの攻めに対して8.リチャード・ブラウンが危険なタックルで一発退場。このペナルティーキックをカーターは外してしまってガッカリするのですが、すぐさまABの猛攻で22mラインまで戻って来たところでワラビーズがペナルティー。これはカーターが決めて12-6とします。

 このワラビーズが14人になっている間にABがトライを取ることを期待したのですが、全くワラビーズの守りに衰えは見られず、逆にあっさりとABのペナルティーから15-6の9点差に戻されてABはもう追いつけないかも知れないという想いが芽生えます。

 ましてABの猛攻の際またしてもマクアリスターがタックルの際顔面をぶつけ、今度はさすがにあごの骨を折ったみたいで医療室に向かい、21.ステファン・ドナルドと交代します。

 しかしABの猛攻は続き、フォワードが一人足りない間にスクラムで押し上げ、ボールを出すとピック&ゴーでABフォワードがジリジリとワラビーズ陣地入り込みます。そして22mラインを超え、ゴールライン5m前ぐらいまで来たときにやっとバックスへボールを出します。そしてサイドラインを駆け上がるカーターにパスが繋がってカーターがゴールラインを駆け抜けたと思ったらこのシティバツからのカーターへの最後のバスが前パスと主審に取られます。

 ここでワラビーズゴール前5mのところでワラビーズスクラムとなりますが、ABフォワードはここでも踏ん張りボールをスクラムを奪い返します。そしてABスクラムに変わったところでシンビンのリチャード・ブラウンが戻ってきます。この場面では両軍への声援が思いっきり高まります。

 8人に戻ったワラビーズのスクラムにもABは強烈にプレッシャーを掛け、ワラビーズ耐え切れずスクラムを崩しフリーキックを得ます。このフリーキックを8.キエラン・リードがすぐさま処理してボールを持ちゴールラインに飛び込む。ゴールライン手前で止められますが、ラックからボールをジミー・コーワンが拾い出し、ラックの隙間を付いてインゴールに飛び込みトライ!誰もが、監督までも両手を上げてトライを喜んだのもつかの間、主審はペナルティーの笛を吹いてる。なんとコーワンが隙間に飛び込んだと思われたのがコーワンの前でラックを守っていたジェロモ・カイノの体がオブストラクションと取られノートライ。カーターのノートライとこのノートライと5分間の間に2つもトライを失ってしまいます。

 それでもABはあきらめず、まだまだ連続猛攻を掛けて57分に相手ペナルティーから3点を返し15-9とします。この後半始まってから60分までの間はABがボールを持ち続け76%のボール保持率という数字が出ますが、ABは苦労して苦労してやっと得点するにも関わらずワラビーズは少ないチャースをしっかり物にしてあっさりと得点していく展開がこの後も続くことになります。

 ワラビーズは少し盛り返して一旦はAB陣地22m内まで攻め込みますが、ABのデフェンスも同じく崩れず、すぐにラックでのペナルティーからボールを自陣に戻されます。ABはこの日敵陣でのラインアウトは主にショートラインアウトで攻めましたが、なかなかワラビーズのラインデフェンスを崩すことは出来ませんでした。しかし62分にやっとそれが出来てトライを取ります。ワラビーズ陣地は入ってのABボールのショートラインアウトは一旦ボールを奪われますが、すぐにボールを奪い返し、ボールを大きく展開、パスを繋いで、シティバツが上手くデフェンスタックルをかいくぐって、最後はノヌがトライを決めましたが、このボールを繋ぐ間にはラインアウトに並んでいなかったマッコウとキエラン・リードが入っています。

 そしてサイドラインから5m入ったところからコンバージョンのキックをカーターはしっかりと決めてくれ15-16とやっと逆転に成功します。けれどワラビーズがキックオフした後AB陣地22m内に入ったところのラックでABはペナルティー!1点差で先行できたのはわずか1分間だけでまたもやワラビーズ先行の18-16となります。

 この日のゲームは実際ここからがすごい展開になります。残り10分間は瞬く間に過ぎ去りますが、その内容は非常に濃いものになります。

 70分過ぎから一旦両軍のバックスによるキック合戦が続きますが、ベリック・バーンズが抜け、そして15.ジェイムス・オコーナーが怪我でベンチに下がった後フルバックに入ったドリュー・ミッチェルがやっぱりいつものようにへたくそなキックでこのキック合戦を終わりにして、ABはAUS陣地10m入ったところでスクラムを得ます。このスクラムからのポールをABフォワードはまたもやピック&ゴーでジワジワ前進します。まずは左側サイドラインよりに前進してから22mライン超えると、このラックを中央よりに戻していきます。そして14回続けられたピック&ゴーで中央付近にやって来ると後ろで待ち構えるカーターにボールを出す。ボール出されたところでドロップゴールが決まると思っていたらカーターのキックはとんでもなくミスキックになって、弾丸ライナーでボールは飛びゴールポストからは大きく外れます。それまで大騒ぎだったABサポーターに代わりワラビーズサポーターが大喜び。

 時間は75分になりAUS陣地22mラインからのドロップオフ。ABはボールを回して攻め立てますが、ワラビーズの強いラインデフェンスに逆に陣地を戻されていきます。そしてセンターラインまで戻されたところでボールがカーターに回されると、カーターは自陣から手薄になっている敵陣左端ゴールラインにめがけてボールを蹴り出します。

 このボールは上手くゴールラインまで届くことなく、サイドラインも切ることのないものとなり、ワラビーズバックス2人がボールを拾いに戻るところにABはステファン・ドナルドと走れるロックの5.アイザック・ロスが追いかけてきます。そしてますボールを拾ったドリュー・ミッチェルにドナルドが強烈タックル、そしてミッチェルからパスを受けたラキー・ターナーを逃しはしないアイザック・ロスがターナーを倒しこみ、ここにドナルド他、トニー・ウッドコックやブラッド・ソーンなどがなだれ込んできます。そしてたまらずこのラックでワラビーズはペナルティー!!もうこのペナルティーの笛が鳴らされたところでブラッド・ソーンやジミー・コーワンは勝利を確信したように大喜び。

 そしてこの大プレッシャーの掛かるキックをカーターが本当にCoolにしっかりと決めてくれ再び1点差で先行する18-19となります。

 時間はこの時点で79分。しかしTV解説は”まだ終わりではない”と言う。確かにその通り、ワラビーズにはまだ時間が残っている。ワラビーズのキックオフはAB陣地10mラインを少し超える程度の小さなもの。このボールを両軍の誰もが上手く取ることは出来ずにボールは走りこむワラビーズ選手側に転がる。すぐさまラックとなりますが、このラックでマッコウがボールを奪ったということをTVレポーターを伝える。このまま時間が経過するのをモールの状態で待てば大丈夫と思った矢先に何故だかボールがワラビーズ側に飛び出してくる。このボールを拾った20.WillGeniaが走りこむ。22mライン内に入ったところでABデフェンスは辛くもこのアタックをとめますが、ワラビーズボールのままでラックが出来る。恐らくどちらのサポーターの頭の中にもペナルティーという言葉が渦巻いてことでしょう。そして球場にはゲーム終了のサイレンが鳴り響く。それでもワラビーズの攻撃は止まらずABデフェンスラインの前をラックを作りながら突破口を探ります。そしてゴールライン手前5m前まで迫ったところのラックから出されたボールを受けに走りこんできた17.BenAlexanderが痛恨のノックオン。この瞬間今度はAB選手みんなが大喜びのゲーム終了となりました。

 本当にタフなゲームだったと思います。やっぱりこの対戦は面白い。

 ワラビーズ 18-19 オールブラックス (前半12-3)
 

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