オールブラックスはまたもややってくれました。敵地でしかも南アフリカより手ごわいはずだと予想されていたオーストラリア相手にまたもボーナスポイント以上となる7トライも取り、今年のトライネーション3連勝として、もう向かうところ敵無し状態になっています。
あまりに調子良すぎて、この辺りでその調子の良いのを誰か止めてくれないか?とまで思うようになっています。このままの状態で来年のワールドカップまで行けばいいのですが、過去の例から見てもワールドカップの前年までは無敵状態だったのが本番になったらフランスなんかに負けてしまう事があるように、また昨年はあれだけ強かった南アフリカが今年は一変してどん底におちている状態から見ても、この辺りで劣勢のゲームをオールブラックスにどこか経験させてもらえないでしょうか?こんな贅沢な悩みまで浮かんでくるような今回のワラビーズ戦のオールブラックスの内容でした。
ワラビーズは確かに南アフリカよりオールブラックスのゲームプランに似た、また新ルール下での最善のプランを取ってオールブラックスに向かってきましたが、このゲームでも一人のプレイヤーが大きく足を引っ張ることになり、また犯すミスがワラビーズのほうがトライに繋げられることが多かったり、デフェンスタックルの精度もオールブラックスの方が断然勝っていました。
今回のゲームは両者の戦いであるテストマッチにしては10個のトライが乱発される、テストマッチらしからぬ内容でしたが、スピードある展開を求める新ルールの下ではこのようになってしまうのでしょう。それにしてもこのゲームではゲーム開始からその点の取り合いもすさまじく速い展開で進み20分ぐらいまではボールがとまるか、相手に奪われるたびにお互いの得点チャンスがやってくる展開で、どこまでお互い得点することになってしまうのか分からない状態でした。
まず、ゲーム序盤はワラビーズキックオフ後自陣からボールを繋ぎながらどんどん攻めあがるスタイルでオールブラックスのラインデフェンスを押し下げていきます。そのデフェンスでオフサイドを犯してまずワラビーズのギットウがペナルティーキックのチャンスを得て、右側からのキックをゴールポストに当てながらも3点を先行します。
この後直ぐのキックオフからABがアタックにかかると自陣からセンターラインを超えたところでワラビーズがブレイクダウンでペナルティー。ゴールポストまで45mほどと距離はあったのですが、この前のウェリントンでのゲームとは違いドーム球場の屋根はこの夜閉められ無風状態。カーターはゴールポストど真ん中にキックを決めてすぐさま3-3。
そしてこの後のワラビーズキックオフボールからワラビーズがAB陣地に押し寄せ、22m内からカーターがサイドラインに蹴り出そうとするそのボールをドリュー・ミッチェルが上手くチャージダウン。転がるボールを上手く拾ったまま右隅にトライを取ります。このドリュー・ミッチェルがワラビーズにとってはこの日の主役となりました。このトライでミッチェルは天国に向かい、チームも勢いに乗りかけますが、この後直ぐにミッチェルは地獄へと叩き落されます。またチームの勢いも1分ぐらいしか続きませんでした。
まずその兆候としてコンバージョン・キックを右隅からギットウがまたもや右ポールにボールを当てて外し、8-3となりますが、カーターのキックオフで再開したゲームは今度はワラビーズが自陣22m内からベリック・バーンズがサイドラインに蹴り出そうとしたボールにカーターとマアア・ノヌが猛烈ダッシュでチャージダウン。このボールをカーターが拾って自ら本当のお返しトライを取ります。もちろんカーターのコンバージョンキックはしっかり決まり、8-10とオールブラックスが逆転。
そしてワラビーズもゲームの流れにあわせ早いテンポでこの後も攻め込みますが、センターラインでのブライクダウンでカイノがボールを奪うとすぐさまボールは展開されブラッド・ソーンがデフェンスラインに一発ぶち当たった後メアラム/ノヌ/スミスとボールは繋がれWingのコーリー・ジェーンまで行ったところでジェーンはワラビーズ、キャプテン;ロッキー・エルソムにサイドライン外に押し出される間際に絶妙のキックを見せてボールをワラビーズ22m内に転がします。このボールをワラビーズのバックスが戻るより早く拾ったムレアイーナがゴールラインを駆け抜けトライ!コンバージョンは外れますが、8-15となります。とにかくオールブラックスがボールを奪ったらそこからのアタックはとてもとても早い。そしてそのボール回しがとても上手い。バックスはもちろんのことブラッド・ソーンや、ジェロモ・カイノなどのロック、フランカー陣も断然上手い。
ワラビーズはまだまだオールブラックスから流れを取り戻すチャンス、ゲームプラン通りのプレーを取り戻すチャンスはあったのですが、この辺りから自らのミスでそのチャンスを取り逃がしていきます。
まず8-15になった直後からのキックオフ後直ぐにペナルティーキックを得ますが、ギットウがこの右側からのキックを今回はポールに当てることも無く右側に大きく外します。けれどこの後直ぐに再びペナルティーをABから奪い、今度は左からのキックだったのでギットウのキックも決まり11-15とつめます。
そしてワラビーズもデフェンスが踏ん張りを見せ始め、ABのアタックを22mラインで食い止め、早いテンポを止め、ラックでこの日も大活躍になったデビット・ポコックがブレイクダウンでボールを奪い、22mライン内からボールを回して攻め上がろうとするところでオーウェン・フランクスがワラビーズアタックラインに対してオフサイド、しかもタックルがショルダーチャージと見なされイエローカードが出されます。
ここでオールブラックスは14人になってワラビーズは断然有利にゲームを進めることが出来たはずなのに大きなミスがこの後続きます。まず相手のイエローカードからの早い流れを止めたくないのか22m内からAB陣地へと蹴りだしたキックボールはサイドラインをきらず、あっさりABのカウンターアタックを誘います。
そしてセンターライン上でこのアタックを食い止めたにもかかわらずラックでワラビーズがペナルティー、ゆっくりと時間を稼ぎたいにABに対してラインアウトのチャンスを与え、しかも自陣に引き戻されABのアタックを防戦することになります。このデフェンスは一旦上手くいって、センターラインまでボールを戻しますが、ここでまたワラビーズはラインアウトのスローインをミスり、あっさりボールをABに渡します。そしてこのボールがカーターに渡るとカーターはワラビーズバックスの手薄になっている左隅にボールを蹴り込みます。このボールにはアシュレークーパーが追いつくのですが、22mライン手前で追いついたためそのままボールを持って走り始めるところにABのバックス陣;ノヌ、ロコソコ、そしてコンラッドスミスがこぞってなだれ込んできます。あっという間にアシュレークーパーはラックで孤立してボールをABサイドにこぼします。ここにタイミングよく駆け寄ってきたのがリチャード・マッコウ。ボールを地面からすくい上げるとサイドライン際を駆け上がる。デフェンスタックルが一人襲って来るのをステップで交わしたマッコウはそのまま、ゴールラインに倒れこみトライ!.このトライはオールブラックスのフォワードとしてはジンザン・ブルックを抜く最多のトライ数となりました。
まだまだワラビーズのミスは続きます。この後直ぐにはワラビーズもキックオフからAB陣地になだれ込み、22mライン上でペナルティーを取り、得点チャンス到来と思ったのもつかの間、逆サイドでTV画面には全く映ってなかったところのどこかで、ドリュー・ミッチェルがショルダーチャージを犯していて、これに対してイエローカードが出されワラビーズも14人になってしまいます。まして得点チャンスも吹き飛び、ペナルティーキックもカーターに譲ることになります。
この後ワラビーズはABが14人の間に何とかペナルティーを一つ得て3点を取りますが、全く流れを取り戻せずイライラが募っていくことになります。そのイライラが最も際立ったのがキャプテンのロッキー・エルソムで何度か主審に対してアピールを繰り返しては跳ね返され、最後は主審から反感を買うようになり14-22になった後直ぐにそのロッキー・エルソムのペナルティーからABにあっさり3点を返されます。
前半はこのようにワラビーズが点を取るとABはその倍返しで得点するようなことになり、どんどん得点差がついていきます。この日両軍ともセットプレイなどは互角の戦いのようでしたが、唯一決定的にABの方が上手く行ったのがキックオフ後のボール処理です。ワラビーズが苦労して得点を挙げた後のキックオフボールをこの日はことごとくABが支配しました。カーターのキックボールの落としどころが絶妙というのもありますが、得点された後の反撃の切っ掛けがすぐさま始まるといった感じでこれがワラビーズに追加点を簡単には許さない、流れを返させないことにつながりました。
前半36分にオールブラックスはこの日4つ目のトライをコーリー・ジェーンが取って14-32で折り返すと後半始まって直ぐにワラビーズはこの日のゲームを決定的に決めるミスを犯します。この日先制トライを取ったドリュー・ミッチェルがABのアタックを受け自陣サイドラインにアシュレークーパーと共に押し出されたボールをコンラッド・スミスがクイックスローインを試みようと手にしたところを叩き落とした行為が遅延行為と見なされ、この日二つ目のイエローカード=レッドカード退場処分を受けます。
この両軍の長年続く対戦でレッドカードが出されたのは初めてのようですが、ワラビーズは後半入って何とか自分のスタイルで反撃しようとしている矢先に14人になってしまいゲームを自ら決めてしまったような雰囲気になります。
その通りこのペナルティーからABはワラビーズ陣地で攻めあげムレアイーナが45分にトライを取り14-39となります。25点差がつきまだ時間も残り35分も残っているのでABがどこまで得点するかという興味も出てきましたが、ここからワラビーズは14人でこの日やりたかったスタイルのアタックに出てきます。
このアタックはボールを回して、自陣から攻めあがるABと同じスタイルになりますが、ABのデフェンスもさすがに硬いのであっさりとトライまで結びつくことはありません。しかし時間を掛けて少しずつ陣地を奪って行き、ABゴールラインへとどんどん近づいていきます。時間は掛かりますが、相手にボールを渡さない、攻撃のチャンスを与えない、敵地でゲームを進めることは後半入ってどんどんワラビーズは14人で成し遂げていきます。後半ワラビーズはこのようにして2つのトライをあげますが2つともアタックを開始してから10分間の時間が掛かっています。
これに対してオールブラックスはその得点を与えた直後に流れるような早い展開ラグビーでキックオフから2分半で一つのトライを取り、最後の最後にも全員参加の展開ラグビーでコーリー・フリンがおまけのようなトライを取って、結局は取られたら取り返すという前半とはあまり変わらない、終始劣勢になることのないゲームを見せてくれました。
ワラビーズ 49-28 オールブラックス (前半14-32)
2010年8月1日日曜日
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