2010年11月28日日曜日

11/28 ウェールズ vs オールブラックス  観戦記

 オールブラックスはこの北半球遠征最後のゲームで初めてカパ・オ・パンガのHakaを披露して、最後も気合入れてウェールズと戦う心意気を見せてくれましたが、またもやこのウェールズ戦では恒例になりつつあるキックで得点を取り合って逆にウェールズの評価を回復させるようなゲームになりました。

 しかし昨年の6ネーションズ戦でのイタリア戦以来7戦勝利の無いウェールズは地球上トップチームを苦しめることが出来ましたが、大事なところでのミスも多く、オールブラックスに突き放される結果となったのも確かです。

 このゲームでダニエル・カーターはジョニー・ウィルキンソンの持つ総得点記録を抜くことは確実視されてましたが、意外とその結果が出るのは2回目のプレスキックとなりました。

 このゲームでも最初に得点をあげたのはABではなくウェールズ。しかもゲーム開始のキックオフ後最初のステファン・ジョーンズが蹴り上げようとするキックボールに対するチャージが危険なタックルと見なされゲーム開始から1分でウェールズに3点が上げられます。

 けれどゲームが動き始めると終始動きを止めないABのアタックに対してウェールズの出だしはあまり良くなくミスが目立ちます。その隙を突いてABは簡単なトライを前半に2本とります。

 最初のトライはウェールズに3点先行された直後始まるABのアタックでウェールズ陣地に入って得たペナルティーはキックで同点を狙わずサイドラインに蹴りだしラインアウトからのセットプレイ。

 このセットプレイで今回のABバックス陣の強力なところが分かります。ラックからのボールをカーターが大きなパスで12;サニー・ビル・ウィリアムスに供給するとSBWは相手デフェンスのターゲットと自らなりボールを繋ぐ役目、そこで14;イサイア・トエアにパス。トエアバはデフェンスラインが甘いと見て角度を変えて縦に突っ込む。これに対するタックルが本当に高くて甘いものになって3人のタックルを叩き落としながらトエアバは突き進み、最後はサイドライン際を駆け上がる11;ホセ・ギアーにパス。そしてギアーはパスを受けると楽々トライを左隅に取ってしまいます。

 このコンバージョンをカーターがわずかに外してウィルキンソンの記録に並ぶ機会を逸っしましたが、その後直ぐにウェールズのラックでのペナルティーから47mほどのキックを見事に決めてカーターはあっさり新記録を作りました。けれどこの日のカーターのキックは前半あまり調子は良くなくこの後3本のキックを外しています。

 3-8となってABは早いボール回しでどんどんウェールズデフェンスにアタックを仕掛けていきます。ホセ・ギアーが、ムレアイーナが、そしてコンラッド・スミス、イサイア・トエアバなどのバックス陣が強力にラインブレイクを仕掛け、ウェールズ陣地にあっという間に入り込みますがさすがにウェールズデフェンスもそれを食い止めボールを奪い返すとキックでAB陣地にボールを戻すことが繰り返されます。

 この動きを両軍とも止めたく無いようでペナルティーを得ても直ぐにボールを動かし始め、キックボールがサイドラインを切ってもクイックスローインでカウンターアタックを仕掛ける。お互いボールを動かし続けるプレイが前半の中盤は延々続きました。

 そんな中で次第に足が止まってきたのがウェールズのほうで、敵陣22mライン内から蹴り返されたボールをホセ・ギアーが受けるとウェールズから誰も駆け上がって来ないのでこのときはじっくりと攻める感じでまずはカーターにパス。カータ-もこのデフェンスラインの動きをじっくり見るようにプレッシャーを感じることなくそのデフェンスラインの穴を探りながらセンターラインまでやってくる。そしてデフェンスラインの前に来るとテンポを一変させ体を交差させるようにムレアイーナにパス。ムレアイーナはカーターの体を盾にしてあっさりライン突破。この動きに足の止まったデフェンスはついて来れずムレアイーナはハンズオフでタックラーを一人交わした後はゴールラインまで独走するトライを見せます。これも楽勝のトライに見られました。

 これでABが突き放していくかな?と思われましたが、ウェールズはここから立ち直ってきます。デフェンスを固めるようになり、キックボールを有効に使いAB陣地を奪っていきます。

 一度は12;ジェイムス・フックが22mライン内でのアタックからゴールラインに突っ込んだシーンもありましたが、ムレアイーナのタックルでトライを防がれます。けれど連続攻撃は続かないけどラインアウトやスクラムでAB陣地内でゲームを進めることによって前半はウェールズがボール所持率44%にもかかわらずテリトリーはABを上回って63%獲得した結果2本のペナルティーキックから9-13と食い下がる感じで前半を終えます。

 後半入ってからもABはボールを持ち続けたいので自陣深くからでもボールを回してきますが、それに対してウェールズはデフェンスがしっかり機能して行き、そしてキックボールを使ってはAB陣地へと入って行きます。そしてこの後半始まる前後にお互いベンチから興味深い交代が行われます。

 オールブラックスは前半終了間際に膝を痛めたキエラン・リードに代わりダニエル・ブレイドが、そして47分にサニー・ビル・ウィリアムスに代えてマアア・ノヌを投入。同じく47分にウェールズは注目のNo。8ライアン・ジョーンズと6番という2人のフランカーを同時に代えます。

 この効果が早速出たのはウェールズのほうでした。AB陣地22mライン付近のウェールズラインアウトから始まったアタックでゴールライン手前のラック内でダニエル・ブレイドがイエローカードとなるペナルティーを犯してステファン・ジョーンズのキックから12-13と1点差に詰め寄り大歓声が上がります。

 この後のキックオフ直後ウェールズは自陣からのアタックでABからペナルティーを取り、更に大歓声が上がったのですが、このフリーキックをまたもやサイドサインに蹴り出すことをミスりABのカウンターアタックを受けます。

 このカウンターアタックから始まる連続攻撃でまたもやあっという間に、最後はホセ・ギアーが右隅に飛び込んでトライを取り、カーターのキックもこれは決まって12-20と引き離します。

 その後ABは逆に14人なのでなるべくウェールズ陣地内でゲームを進めるようにして、しかもフォワードを前面に押し出すピック&ラックを使ってゆっくりと攻め込みます。そしてペナルティーを得て12-23としたところでダニエル・ブレイドがSin-Binから出てきます。

 この時点で62分。ここでもオールブラックスが引き離して行くかな?と思われた事とは逆にウェールズが盛り返してきます。12-23となってABが15人に戻った直後攻めあがる守りでABからペナルティーを奪いすぐさま15-20として、続けてスクラムで踏ん張り、ペナルティーを奪うと47mと距離はありましたがステファン・ジョーンズがそのペナルティーキックを無難に決めて18-23とまた詰め寄ってきます。サポーターの声援も盛り返してきます。そしてカーターのサイドラインに蹴り出すキックボールが珍しく大きすぎるミスが出て更にウェールズサポーターは盛り上がります。

 けれどこの状況で焦らず、流れを取り戻すのはオールブラックスのほうでした。しっかりとデフェンスを固め、ボールを持つと全員参加のアタックをすばやく見せてトライを2本連続で取ります。

 AB陣地中央からのウェールズアタックをしっかり食い止め10mラインから前進を許さず、仕方なくステファン・ジョーンズはABバックスの裏に小さくキックボールを上げキック&チェイスを試みますがボールはサイドラインを切りABラインアウトになります。

 後半2本目となるトライはこのラインアウトから始まり、自陣から攻めあがるときにセンターラインまでもって行ったのはジェロモ・カイノの強力ラインブレイクでした。このカイノはこの日の最優秀選手に選ばれることになります。そして敵陣に入るとABのムレアイーナがキック&チェイスを試みこれもウェールズの12番ジェイムス・フックにボールを取られますが、フックが敵陣に蹴り返そうとするその足元にムレアイーナがタックルを掛けボールはAB側にこぼれます。

 これをABフォワードがすばやく回しますが、ラックからジョン・アフォア/ケビン・メアラム/ブラッド・ソーン、そしてソーンからのパスがアンソニー・ボリックにわたるときにはデフェンスにもぽっかりと穴が出来、そこをボリックが駆け上がり最後はバックスのイサイア・トエアバが止めを刺すトライを決めて18-30となります。

 そしてこの直後もABはスピードを緩めず相手のキックボールからボールをすばやく繋ぎ、センターラインを越えてウェールズ陣地10mラインまでの間で右にそして左に大きなパスを使いボールを左右にすばやく動かします。そしてラックとなったところからブラインドサイドにジミー・コーワンが駆け上がりながら相手タックルを食らう前にバックパスでムレアイーナにパス。そしてムレアイーナもパスを受けると同時に襲って来たタックルをしっかり受けながら自ら壁となり後ろから来るジョン・アフォアにパスを繋ぐ。そうするとアフォアの前にはゴールラインまで誰もいないようになってプロップ控えのアフォアがドタドタと独走トライを決めました。

 これで18-37となり時間も77分。さすがに安全圏に入ったABでしたがウェールズは最後まであきらめを見せず最後の最後にABのデフェンスラインを崩して1本きれいなトライを取ったところでゲームは終了となりました。

 オールブラックス 37-25 ウェールズ (前半13-9)

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