2011年8月28日日曜日

8/28 ワラビーズ vs オールブラックス トライネーション最終戦 観戦記

オーストラリア強い!オールブラックス2連敗。ロビー・ディーン恐るべし。といった見出しが前半終わったところで頭に浮かびました。前回の南アフリカ戦で破れたときより今回の敗北は非常にヤバイ感じになった気がします。今回はカーターも、リチャードマッコウもいてワラビーズに手も足も出なかった、圧倒されて負けた感じなのでワールドカップでの決勝が非常に不安に思わせるゲームとなりました。

 しかし言い訳ではないですが、いろいろなHopeはあります。前半に20-3と17点差もつけられたにもかかわらず後半に入ってゲームプランを代えて20-20まで追いついたこと、ワールドカップでの決勝戦はニュージーランドのオークランドで行われること。そしてよく言われるようにトライネーションの結果とワールドカップでの結果は違うものだということ。WCの年はこれまでオールブラックスはとても調子よく、ヨーロッパ遠征を制覇、トライネーションも全勝などしてWC優勝最右翼といわれ続けてきました。前回のフランス大会でもその年のトライネーションを快勝し、敵無し状態で挑んだワールドカップだったのにもかかわらず完全に楽勝と思われたフランスにあっさり逆転負けを喫したのですから今回の敗北は逆に絶好のWake-UpCallと言われるでしょう。

 それにしてもロビー・ディーンは今のオールブラックスに勝つ為の手段を十分把握しているようです。前回オークランドでの敗北、だけど後半には互角の勝負が出来たこと、そして先週の南アフリカの戦法を見てこのゲームに修正と強化をメンバーに徹底させたと思わせるような内容でした。

 また今回のメンバー起用もロビー・ディーンの思惑通りにかなったようで、No。8のRadikeSamoの大活躍はまさに期待通りの結果といえるでしょう。そのほかゲーム前に急遽ジェームス・オコーナーが使えないことからアダム・アシュレー・クーパーを左Wingに入れたのもバッチリ。いつもならセンターに起用され、コンラッド・スミスやマアア・ノヌのマークに忙しかったアシュレークーパーが解放されたようにWingで生き生きとその実力を発揮、特にデフェンスでは素晴らしい働き。対するABの11.ザック・ギルフォードは前半途中で見るからにマッチアップとしてはアシュレークーパーに及ばないように思えました。

 それにしてもチームとしてワラビーズは先週の南アフリカが見せたデフェンスを更に上回るような強くて早いデフェンスを引き、まるでデフェンスタックルが次から次へと襲い掛かってくる波状デフェンスといった感じ。これだからABのボールをすばやく展開して繋ぎながらアタックラインをあっという間に押し上げていく戦法が次から次へと途切れました。パスを受けると同時に強力タックルが襲いかかり、それを逃れてもパスできる体勢に成れない、またパス先を見てもどこにも完璧なマークが張り付いていてパス先を探してしまうか無理なパスをだしてしまう。そしてブレイクダウンになるとワラビーズの集散がABのそれを圧倒。ボールをどんどん奪われていきました。

 またアタックにおいてもクェイド・クーパーが今回はオークランドのゲームと違い本領発揮といった感じに戻りマジカルハンドのパスが随所に見られ、ウィル・ギニアのキックプレイも要所要所で非常に効果的な役目を果たします。ABは前半に始まって直ぐにキエラン・リードがくるぶしを痛め、そしてアダム・トンプソンも37分には腕の故障で下がったことでABフランカー陣が崩れたこともありますが、ワラビーズのフランカー陣の活躍はSamoを筆頭に素晴らしいものでした。このゲームでは世界最高のNo。7がマッコウからデビッド・ポコックに移り変わることをしっかり証明したようにも思われるプレイがこれも随所に見られました。

 そしてワラビーズの恐れられていたバックス陣もこの日はその実力を十分発揮、ゲニア、クーパーを始め11.ディグビー・イオアニ、15.カートリー・ビールが縦横無尽動き回ってABのデフェンスを崩し回りました。これでABのタックルミスは前半で10個にも及びどんどんテリトリーを奪われる結果となりました。これに対してABのバック3の活躍は全くといっていいほど見られず、ムレアイーナのカウンターアタックもワラビーズにとってはお見通しのような感じで直ぐにデフェンスラインにかかります。そしてボールが展開されないのでしかたがないのですが、Wingのサックにしては前述のようにアシュレークーパーにとことん先を越され、そしてコーリー・ジェーンにいたっては全くといっていいほど攻撃参加でその姿を見ることがありませんでした。頼りのカーターにしろそのキック・プレイでは精細を欠いたように思われました。それよりもカーターもこの日はワラビーズのアタックを食い止めるデフェンスのほうに忙しかったと思われます。

 そのカーターがゲーム当初からワラビーズデフェンスに襲われます。ゲーム前のハカはABにとって敵地で見せるのは珍しいカパ・オ・パンガだったのですが、その気合もゲーム始まればワラビーズのほうが勝っていたことが直ぐに分かりました。カーターのキックオフから始まったゲームはABが最近のゲームで見せる速攻のお株を奪うような猛襲を見せ付けます。

 キックオフボールを蹴り返してAB陣に戻した後ワラビーズ全員がセンターラインに猛ダッシュで駆け上がりカーターがボールを持って走りこんでくるのに襲い掛かり、ブレイクダウンとなったところに一体何人のワラビーズがいるのか分からないぐらいの人数があっという間にカーターの体の上に押し寄せボールを奪います。そして次のリチャード・マッコウが駆け寄ったラックにもワラビーズフランカー陣が押し寄せ、ペナルティーを取ります。このボールはAB陣地22mライン上のサイドラインに蹴りだしワラビーズラインアウトとします。このラインアウトをミスったワラビーズでしたが、再びカーターが22m内から前方に蹴り出そうというところを3;ベン・アレキサンダーが襲い掛かりチャージ・ダウン。そのままボールを追いかけるようにワラビーズフォワードがゴールライン前に押し寄せ、ABゴールライン前でラックが出来ます。ABは何とかこのゴールラインを守り通しますが、ラックでペナルティーを取られクエイド・ク-パーが楽々先行の3点を挙げます。


 ABもこのワラビーズの勢いにあわせるようにアタックを仕掛けますがこれに対するデフェンスが非常に強い!そしてギニア、カートリー・ビールなどが上手くキックを絡ませたり、マジカルハンド、そしてマジカルランをこの時間ぐらいから披露し始めたクェイド・クーパーのアタックもあってどんどんテリトリーを奪って行きます。そしてAB陣地に入るとABが自陣から攻めあがるところに猛烈なデフェンスを見せABのハンドリングエラーを誘います。

 そしてワラビーズがAB陣地に居座り始めた10分、AB陣地22m内まで入り込んで出来たラックからのボールをギニアがバックスにパスを出す。このときキエラン・リードがくるぶしを痛めて22m内に倒れている。その彼の横をデフェンスラインをかいくぐるようにクェイドクーパーがブレイクラン。そしてWingのアシュレーク-パーにパス。アシュレ-クーパーは一つステップを踏んでフルバックのムレアイーナを交わしゴールラインに突っ込みます。これに対しゴールライン上を守るピリ・ウィープが彼に覆いかぶさるようにタックル、そして右手を引き戻すように彼の体をゴールライン手前まで引き倒そうとします。これに対してアシュレ-クーパーは何とか左手片手でタッチダウンを試みますが、ここに先ほど抜かれたムレアイーナが滑り込んで戻ってきて彼の左手に絡みつきボールを奪ってしまいます。当然ビデオ判定になりましたが、スローモーションでは確かにムレアイーナがタッチダウン寸前ボールを奪い取っていました。

 これでキエラン・リードは負傷した為ビクター・ビットに代わり、アダム・トンプソンも左手上腕に大きなバンテージを巻かれ負傷したことが伺えました。見事なトライセイバーが見られましたが、ワラビーズの攻勢は尚も続きゴールライン手前5mのワラビーズスクラムの後何度かゴールライン手前でラックが続かれた後ABはこのボールを奪えず、最後はラックからボールを持って駆け込んだウィル・ギニアにトライを許す結果となりました。まだ開始から15分ですが、ワラビーズが10-0とリードします。

 ABがこの後得点できたのは23分になってから。この間も両軍の高速スピードで展開する攻防が続きますが、その中でもワラビーズのデフェンスラインが強い為ラックを作りながら前進するピック&ゴーを使いピリ・ウィープがラックから左右にボールを振り分ける所にワラビーズもたまらずオフサイドを犯しカーターがこのペナルティーをキックでしっかり決め10-3とします。

 しかしこの3点も直ぐに取り戻されます。ワラビーズはバックス陣のキック、そして巧みなステップでラインブレイクしていくアタックを交えAB陣地へとテリトリーを奪っていきます。またこの時点になると断然ワラビーズの気迫あるプレイが目立ち、ABはどうしても逃げの攻撃に陥る感じがしました。そして高速アタックの中ABのタックルミスも誘い30分にはノヌのアーリータックルのペナルティーから3点をクーパーがキックで決めて13-3となります。

 そしてワラビーズの攻勢が圧倒的だと解り示すトライがこの直後でます。カーターによるキックオフ後返しのキックとしてギニアがセンターライン付近上空にハイボールを蹴り上げます。これを取りに入ったのがABマッコウ、ワラビーズポコックという両軍のNo7.そしてこれに勝ったのがポコックでした。ポコックがハイボールをマッコウと絡まりながらも上手くキャッチするとそのまま少し走りこんでラックとなります。この時点でAB陣地にはあまり人数が戻っていませんでした。ラックからすぐさまボールを出してNo.8のSamoが受け取ると前方に向けてデフェンスが甘いことを見て取って一人でAB陣地に駆け上がり始めます。これに追いすがるようにアダム・トンプソンがSamoに手を掛けますが、これをSamoは払いのけるようにトンプソンを張り倒し、その後はゴールラインまで独走状態になります。

 このゲームでワラビーズ史上最年長の35歳で先発に抜擢されたSamoですが、さすがにフィージアンだけあって巨体でもボールを持たして走らせたら誰も追いつけない、止められないものがあります。ゴールライン手前でコーリー・ジェーンとムレアイーナに追いつかれ両側からタックルを受けますが、ゴールライン手前5mでのタックルでは勢いのあるSamoを止められません。3人倒れ込んでSamoのトライとなりました。本当にこのトライはこの日のワラビーズの勢いを象徴するものでした。これで20-3となり、またアダム・トンプソンが負傷でアリ・ウィリアムスと代わってフランカーが2人もいなくなり、どうしても前半終了までに得点したいABの反撃を食い止めるワラビーズを見ると後半にABの反撃があるとはどうしても期待が出来ませんでした。

 しかし後半に入ってABは見事に攻撃パターンを替えて反撃に出ます。それは前半ワラビーズのアタックにつられるようにキックボールを使ってテリトリーを取りに入ったり、ボールをすばやく展開するアタックを止め、ボールを保持しながらラック&ゴーでジワジワゆっくりと前進していく戦法です。そうだこれがあったと思わせる戦法です。観戦者にとってはスピードのない迫力に欠く戦術ですが、テストマッチらしい戦法といえばそうです。

 前半ボールを蹴り出しては逆アタックを受けていたり、パスを展開するうちに強力デフェンスタックルを受けてハンドリングエラーやノックオンでボールを失っていたのがなくなりました。そして47分にそのラックでのペナルティーから3点を返した後連続トライを挙げてなんと前半に17点差ついていたのを同点まで戻すことにABは成功します。この辺りはすごいオールブラックスです。

 3点を返した後オールブラックスはセンターライン上のラインアウトから始めて延々4分間に及ぶラック&ゴーを続けます。ジワジワと22mラインまで前進して連続ラック&ゴー26回目になってバックスにボールを展開。カーターがラインブレイクした後パスを受けたコンラッド・スミスがゴールポスト下に飛び込みまず7点返します。これで20-13。

 その後AUS陣地にピリ・ウィープのキックボールで入り込んだABは再び22mライン上からピック&ゴーを始める。一旦ラックの後のABアタックでオブストラクションがあってAUSスクラムになります。ここでこれまで沈黙を強いられていたABサポータからオールブラックスコールが上がります。この声援に押されてか?AUSスクラムを押し返してABボールのスクラムにとって替えます。これでオールブラックスコールが更に高まりました。その声援に答えるようにスクラムの後数回のラック&ゴーをした後バックスにボールを展開したところでマアア・ノヌが相手デフェンスラインの動きの逆を行くような巧みな動きを見せてゴールポスト下にトライをあげました。

 この日ABのバックスではセンターコンビのコンラッド・スミスとマアア・ノヌだけがワラビーズの攻勢に対して柔軟にそして激しく順応していたように思えました。このトライでついに同点追いついたABでいつもならこの勢いが倍増するように畳み掛けてくることを承知のようにワラビーズはすぐさま反撃に出ます。これを先導したのは今年スーパー15の決勝戦でも決定的トライの先導をしたウィル・ギニアでした。

 クーパーのキックオフから再会したゲームはすぐさまワラビーズ自陣から攻めあがるラック&ゴーになります。センターライン上でワラビーズのラック&ゴーが2-3回行われた後ギニアがラックの脇に隙が出たのを見逃さずボールを持って駆け上がります。ケビン・メアラムがタックルにかかりますが、ギニアはこれを交わし、その後に襲い掛かるムレアイーナをステップで交わし横に続くディグビー・イオアニにパス。イオアニはこれまた鋭いステップでコーリー・ジェーンを交わし更に横に走りこんできたカートリー・ビールにパスを出して、その後はデフェンスがABゴールライン前には誰もいなくなってビールが楽々トライをあげます。

 この際コンバージョンキックをク-パーが外して25-20の1トライで逆転可能圏内に留まり、時間も63分でゲーム勝敗の行方がますます分からなくなり球場も盛り上がります。この後ABの逆襲が見られましたが、それもワラビーズのデフェンスが盛り返しボールをAB陣地に戻します。そしてワラビーズのアタックをABも守るのですが、70分にAB陣地10mのところでペナルティーを犯します。これをクーパーが再びペナルティーキックを外してワラビーズも安全圏に逃げ切れません。

 けれどこの後の10分間をワラビーズは再び気迫溢れるデフェンスを繰り広げ、またラック&ゴーでボールを保持しながら時間を稼いで25-20のまま逃げ切ることに成功しました。これによってワラビーズにとってはトライネーションのカップを2001年以来始めて手中に収めることとなりました。

 ワラビーズ 25-20 オールブラックス (前半 20-3)


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