2011年10月17日月曜日

10/17 ラグビーワールドカップ準決勝 オールブラックスvsワラビーズ観戦記  

 ニュージーランド400万人の期待に見事オールブラックスは答えてくれました。宿敵ワラビーズに対して素晴らしい出来のゲームを展開して危なげなく決勝戦へと進むことになりました。

 心配していたマッコウの状態、初先発となるクルーデンへのプレッシャー、チームデフェンスの仕上がりなどは前半途中で全て吹き飛び、ダン・カーターに代わり今や救世主の存在になったピリ・ウィープのキックが何度も外れてもワラビーズの反撃を恐れることなくオールブラックスの強いゲームを後半は楽しめるほどでもあったゲームでしょう。

 この日もオールブラックスはハカに気合の入るカパ・オ・パンガを選択。地元オークランドのゲームではやはりこれのほうがバックアップするサポーターにとっても戦闘意欲が沸き起こります。

 そしてこの日のワラビーズがどれだけ強いのか弱いのかが分かるプレイがゲーム始まった直後から連続で見られます。まず誰もが拍子抜け?これはオールブラックスの勝ちゲームだなという予感をさせたプレイがクェイド・クーパーのキックオフでした。彼のキックオフボールはいきなりサイドラインを切る大きすぎるキックとなりワラビーズの最初のアタックもあっさりなくなります。

 そこでセンターライン上でのABスクラム。これも少しオーストラリアのスクラムを警戒してましたが、オールブラックスのフロントローは最初のスクラムから圧倒。そしてこの後オールブラックスのアタックが上手出来であることが全て短い時間に集約されて見られます。

 まず相手ハーフバック;ギニアが上げるハイキックボールに対してWingのコーリー・ジェーンが見事にキャッチするとボールを展開しながらもフォワード、そしてフルバックのイスラエル・ダグがデフェンスラインに突っ込んではどんどん前進していく。オーストラリアの激しいデフェンスタックルも十分期待されたのですが、それが見事に外れてオールブラックスのアタックはワラビーズのミスタックルを誘って行きます。

 そしてこの日ワラビーズにはフルバックのカートリー・ビールがいない。これはオールブラックスにとっても攻守に大きく生かせました。対するイスラエル・ダグの動きが素晴らしいこともありましたが、彼を止めるべきビールがいないのは大きなアドバンテージでした。そのイスラエル・ダグの見事なラインブレイクランとサイドライン際押し出されながらも見事なパスでサポートするマアア・ノヌにボールを繋いで先制トライを上げます。このトライで今日のゲームは決まったと思いました。このトライまでにワラビーズは9回もタックルミスを犯します。ウィープの右端からのコンバージョンはわずかに外れるのですが、ゲーム始まって6分で5-0となります。

 またこの後オールブラックスにとっての不安材料だった残りのことも次々と解消されていきます。ワラビーズのキックオフで再スタートしたゲームもワラビーズが上げるハイキックボールをイスラエル・ダグがうまく処理してリチャード・カフイがサイドライン際を駆け上がる。そしてワラビーズ陣地深くまで入ってワラビーズがそこから反撃に出るところでブレイクダウンになるとマッコウがいち早く突っ込んでいく、これに対してデビッド・ポコックもすばやい反応を見せますが、ペナルティーを取られる。ここでのピリ・ウィープのペナルティーキックはゴールポストに当たり外れますが、大きくAB側に跳ね返ってきて再びABの猛攻。ここで見られたのがアーロン・クルーデンの積極的なアタック。そして22m内で再びポコックがブレイクダウンでペナルティー、サポーターからも大歓声が上がります。このキックは無難にウィープが決めて12分には8-0とします。マッコウ、そしてクルーデンの動きは不安ではなくなり強力な武器にこの時点で見れるようになります。

 さすがにワラビーズも防戦一方になるわけでなくこの日の一番ワラビーズがゴールラインに接近したプレイが見られます。クェイド・クーパーからのキックオフボールを返すピリ・ウィープのキックボールはサイドラインを切らずにジェイムス・オコーナーが自陣でキャッチ。ここからカウンターアタックが見事に決まり、Wingのイオアニがパスを受けると彼特有のステップも交えながらどんどん突き進みABのデフェンス3人ぐらいともまれながらもゴールライン手前3mぐらいまで迫ります。そしてゴールライン前をワラビーズはボールを展開しABのゴールラインでのデフェンスがこの日初めて試されます。この試練は直ぐに決着してブレイクダウンに突っ込んだマッコウがペナルティーを取られ、ジェイムス・オコーナーに3点のキックを謙譲します。

 15分で8-3となりますが、この後から前半終了までオールブラックスが上出来なことが続きます。特にテリトリーをどんどん奪い取ってワラビーズの反撃を最小限に抑えることに成功しました。その成果を上げたのがこの日はハイキックボールを制覇したWingのコーリー・ジェーン。彼は何度も何度も相手のキックボールを素晴らしい技量でキャッチ。時にはピリー・ウィープが22mライン内から上げるキックボールを追って10mライン上でそのボールを空中で相手と争いながらもキャッチする技まで見られました。これに対してクエイド・クーパーの出来は最悪。ハイボールのキャッチも前にこぼすし、蹴り上げるキックも体勢悪い内に蹴るからミスキックになり、見方のカウンターアタックも先導できず、またAB陣地へサイドラインまでにも蹴りだせないことがたくさん見られました。今やこのクーパーはNZの人にとって国家的悪者状態に陥っていて彼がミスキックやハンドリングエラー、そしてABのカウンターアタックで上げられたハイキックボールをキャッチした直後に駆け上がってきているリチャード・カフイが強力なタックルを浴びせるたびに観衆から大歓声が上がりました。

 クウェイド・クーパーの出来はこれまでのゲームでもあまり良くなかったのですが、このゲームは特に最悪。これに対してABの新10番のアーロン・クルーデンはAB召集2ゲーム目ですでに自ら持つ力量を自由に発揮できるようになっています。20分にはそのクルーデンがドロップゴールを披露して11-3となります。

 ワラビーズはクーパーに代えてベリック・バーンズを投入しても良かったと思うのですが、この後その本人にとってはテストマッチ初めてというドロップ・ゴールを32分に決めるし、またバーンズは12番PatMcCabeが出血により前半途中からベンチとの間を行き来することになって忙しい。ゲームメイカーがワラビーズには足りないことに陥ります。ここでもまたカートリー・ビールの不在が響いています。またもう一人のアタック先導者であるウィル・ギニアもことごとくその蹴り出すハイキックはABのバック3に奪われ、モールやラックからの球出しもABのフォワードによるブレイクダウン支配で上手く出来ない。そしてスクラムもABが強力に押して来るのでバックスへの活きたボールを出せない状態が続きました。

 前半はこのようにABがテリトリーを8割占め危なげない試合運びで14-6と折り返すことになります。けれどさすがに後半はワラビーズの逆襲も予想されたので8点差は十分な得点差では無いことは確かでした。

 後半もオールブラックスが支配し続けることが出来たのはフォワードの強さだったでしょう。特にそのデフェンスで見られるフォワードの強さはこの日ワラビーズを圧倒し続けました。後半入ってすぐ、ABがワラビーズ陣地深く攻め込んだ後ピリ・ウィープが上げたハイキックボールを受けワラビーズバックス陣がボールを横にすばやく展開し12;PatMcCabeがカウンターアタックに出ようとするところを強力タックルをかまして止めたのは3番のオーウェン・フランクス。このときのMcCabeのペナルティーで17-6と得点差を広げます。 

 そしてこの後もワラビーズのアタックを食い止めるのは出足の早いNo。8キエラン・リードであり、ブレイクダウンにも強くてあたりも強烈な6ジェロモ・カイノでした。これにマッコウを加えて動き回りワラビーズの速攻もことごとく食い止られます。また最後まで足が止まらず、そしてその強力なスクラムでの後押しが見られたのはロックのブラッド・ソーンで彼はまたもやこのゲームで鉄人らしさを見せ付けました。

 またABの控えもこの日は誰もがスーパーサブとして活躍。特にベテラン勢の控えはワラビーズの控えに対しても断然強みがありました。55分以降ぐらいから両軍共にベンチから控えを続々投入します。ABはまずピリ・ウィープに代えアンディー・エリス、サム・ホワイトロックに代えてアリ・ウィリアムスを投入。ABのハーフバックはいつもテストマッチでは80分間一人が続けることは最近は無くこの60分ぐらいで交代するのがパターンでした。この日もウィープの役割はここで終了、キッカーはクルーデンに任せるという判断が出来たからでしょう。アンディー・エリスもアリ・ウィリアムスもABの攻勢を崩すことなく動き回りました。また63分にはフッカーにアンドリュー・ホーが投入されるのですが、彼もベンチで温めていたイライラを解消するような活躍がスクラムそしてブレイクダウンで見られました。

 逆にワラビーズは先発のベテラン勢に代え若手の控えを投入してくるのですが、形勢は全くひっくり返すことが出来ませんでした。特にこの日最後の見せ場になったスクラムでは前半20分にすでに1.Sekope・Kepuがベン・フランクスに負けてベンチに下がってジェイムス・スリッパーが入り、後半66分にフッカーがTatafuPolota-Nauに代わるのですが、1.トニー・ウッドコック、2、アンドリュー・ホー、そして3、オーウェン・フランクスの前列はとても強力で66分以降2回もオーストラリアボールのスクラムを押し返してペナルティーを取るほどでした。この2回目のスクラムを圧倒した70分のペナルティーがABにとっても駄目押しの得点となり20-6でオールブラックスはワラビーズを退け16年ぶりのワールドカップ決勝進出を果たしました。

 オールブラックス  20-6 ワラビーズ (前半 14-6)

RWC準決勝 オールブラックス対オーストラリアのゲームハイライトはこちらで見れます。
http://tvnz.co.nz/rugby-world-cup/clinical-all-blacks-book-final-4467181

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