2011年10月16日日曜日

10/16 RWC準決勝第1戦 ウェールズvsフランスの観戦記

 このゲームはまたもやレフリーが台無しにしたゲームとして語り継がれそうです。このゲームを見た人も18分でウェールズのゲームは終わったと思ったでしょう。けれどウェールズはその後奇跡へのチャレンジを続け見ごたえのあるゲームにしてくれました。

 ウェールズは前半始まって18分までにその日の勝敗の行方を自ら決めるような不運、ミスが起こります。ウェールズキックオフからウェールズは攻勢に出てフランス陣地に居座り6分にオフサイドのペナルティーから右サイドライン寄りからこの日のキッカージェイムス・フックが3点先行となるペナルティーキックを決め幸先いいスタートを切ります。

 しかしその後この日の焦点の一つでもあった最初のスクラムでウェールズのフロントローでは重要な役割を果たしていた3;aアダム・ジョーンズが負傷、2回目のスクラムの際(9分)に控えと交代してしまいます。

 この日オークランドは小雨が降るあいにくの天気。両軍キックボールを上げ、そしてハンドリングエラーを誘うゲームとなることは分かっていました。この影響が強く出たのはやはり猛攻を仕掛けるウェールズでした。ウェールズは何度もノックオン、ハンドリングエラーを犯します。そのたびにスクラムになるのですが、このスクラムもウェールズは耐えて10分には逆にフランスからペンルティーを取ります。このフランス陣地10mライン上中央やや左のペナルティーキックをジェイムス・フックは3点を狙うのですが、蹴る瞬間足元が滑り外します。けれどこのキックを見たTV解説の元オールブラックス、アンドリュー・マーティンは滑るうな体勢でのキックだから足元が湿っていなくても恐らく外れていただろうとフックのキック動作自体を指摘していました。このことがウェールズにとっての敗因の一つにもこの後なっていきます。

 そして問題の場面がこの後17分に起こります。フランスがボールをもって自陣から攻めあがろうとする14;ビンセント・クラークに対してデフェンスタックルに入ったウェールズキャプテン7;SamWarburtonがクラークを持ち上げるようなリフトアップのタックルになりプレーが止められます。このときには誰もがこのプレイは警告もしくはイエローカードだと思ったはずです。私は普通のタックルぐらいにも思えたぐらいです。それがTV画面変わればSamWarburtonはすでにベンチに下がり、なんと彼にはレッドカードが出されているではありませんか?これには誰もがびっくりです。ベテランのアイルランドレフリーは躊躇無く、線審にアドバイスを聞くこともせず一発レッドカードを胸元から出します。これは観客もブーイングも出せないほどの早業。皆があっけにとられた感じでした。タックルを受けたクラークは頭から落とされたわけでもなく、フランスの上手いうずくまる演技が少し入りましたが、この後直ぐに起き上がり元気にプレーを続行するのです。レッドカードほどのリフトタックルだったら担架で運び出されるほどのものでしょう!?。この判断はあまりにきつすぎる。これでウェールズは勝てない!と誰もが思ったでしょう。

 この日ウェールズの本拠地カーディフのミレニアムスタジアムでは6万5千ものサポーターがTV観戦を朝の8時から行っていたということですが、この場面を見てどう思ったでしょうか?これがもし今日行われるオールブラックスとオーストラリア戦でリッチー・マッコウが退場になったらどうなることやら?とTV解説も嘆いていましたが、ウェールズサポーターには悲劇の何者でもありません。

 これでウェールズは全てのゲームプランが狂ったことでしょう。この後のスクラムには攻撃の要の12;ジェイミー・ロバーツがオープンサイドにはいることになります。ジェイミー・ロバーツはそれでも終日ラインブレイクに姿を何度も現す活躍を見せますが、さすがにスクラムの後肩で息をするロバーツの姿が画面に映し出されるとなんとも癒えない憤りを感じました。

 そしてそのスクラムでフランスはペナルティーを取ると20分に3-3と同点にします。この日のキッカー;MorganParraのキックは全く危なげないもので、蹴った後はゴールポストまで真っ直ぐ飛んでいきます。フランスもどんどんウェールズ人地へと入るようになって行きます。これに対して14人で守ることになったウェールズはフランスの攻撃に何とか耐えます。そしてフランス陣地にも戻ってはアタックを仕掛けるのですが、どうしても人数が足りない感じ。それでも28分フランス陣地8mほど入ったところでペナルティーを得るとフックは3点を狙うのですが、このキックがとんでもないミスキックとなり話にならない。またフックのフィールドプレーもこの辺りからミスがなんだかちぐはぐなプレーが目立ちはじめ私にはコリン・スレイド状態になっていました。早く彼を代えて欲しい想いが募りました。

 そんな思いは関係なくゲームは進み33分にはフランスがペナルティーを得てウェールズ陣地13mほど入った中央からのキックをParraは無難に決めて逆転に成功します。それでもウェールズはアタックを緩めず何とか前半に追いつこうとしまがフランスのラインを崩せません。38分にフックがドロップゴールを試みますが、これまた全く方向違いに蹴った瞬間から分かるようなひどいキックとなって前半は3-6で終わってしまいます。それでもこの前半にはフランスはウェールズより20は多いタックルをウェールズに放っています。

 これまでのテズトマッチにおいて14人のチームが15人そろったチームに勝ったことはほとんどないということなのでウェールズの後半も期待はあまり出来なかったのですが、けれど奇跡が起こるかもしれない期待は十分持てる内容となりました。

 後半はやはりどちらが早く追加点を上げるかが焦点となり、フランスは41分にドロップゴールをParraが試みますが、外します。そしてスクラムの主導権をしっかりとるため1番、2番の二人をベンチの控えと早々と代えてきます。これに対してウェールズはキャプテンを失ったことからベテランを後半は投入してくるのですが、まずジェイムス・フックに代え大ベテランのステファン・ジョーンズを入れます。これには大きな期待が寄せられたと思います。私もこれでウェールズは勝てると思ったほどです。

 しかしフランスはフォワードがしっかりとウェールズの反撃を抑えることになります。スクラムはウェールズに互角といえるほど堪えられたのですが、ラインアウトがこの日フランスはウェールズに打撃を与え続けました。ウェールズボールのラインアウトをこの日フランスは5回もボールを奪い取ります。この場面がことごとくフランス陣地に攻め込まれたときのことでした。またフランスの追加点を上げる切っ掛けもこのラインアウトからでした。

 49分自陣からウェールズ陣地22mライン手前まで蹴りだしたフランスボールのラインアウトからすぐさまモールにつなぎ、このモールでウェールズからペナルティーを取ります。(実際はこれまたレフリーの判断ミスでウェールズは誰もモールを引っ張って崩してはいませんでした。)これで9-3とフランスが点差を広げます。

 これでもウェールズはあきらめません。ベテランロックのライアン・ジョーズも投入。そして55分自陣からステファン・ジョーンズの素晴らしい相手の裏を衝くキックボールでフランス陣地22m内まで入り込み、そこからのラインアウトボールで始まるアタックにおいてついに9.マイク・フリップスがラインブレイクしてトライを取ります。これで9-8となり、誰もがコンバージョンは決めてくれるだろうと思っていたステファン・ジョーンズがなんと外してしまいます。ここに来てゲームに全く使われなかったことが響くことになりました。それでも1点差、時間は59分まだまだ逆転のチャンスは多分に残されていました。にわかにウェールズサポーターも生き返ったように騒ぎ出します。

 これに対してフランスは先週の南アフリカvsオーストラリア戦でオーストラリアが見せたようなデフェンスに終始します。ウェールズにボール支配率、テリトリー共に6割は支配されながらもデフェンスタックルを浴びせまくることになります。ゲーム終了時にはウェールズが56のタックルを浴びせたことに対してフランスはその倍以上の126のタックルをウェ-ルズに浴びせ守りきったゲームとなりました。

 ウェールズはこの堅い守りからどうしてもペナルティー狙い、もしくはデフェンスライン前のドロップゴール狙いに集中してしまった感じです。14人で、ブレイクダウンでの強みが合ったSamWarburtonを失ったことからもどうしてもそうなるのは分かるのですが、ラインブレイクの試みが少なくなった感じ見られました。これが60分以降ズーットウェールズに響くことになります。

 最後の10分はウェールズがボールを持ってフランスデフェンスラインを脅かすことに終始したのですが、74分はその甲斐あってセンターライン上でフランスのペナルティーを取ります。ペナルティーを犯した2.WilliamServatも頭を抱えるほどだったのですが、このロングキックをウェールズはこの大会でまだ1回しか蹴っていない15.LeighHalfpennyに託します。確かにステファン・ジョーンズにはロングすぎる距離でしかたのない選択でした。このセンターライン中央からのキックは慎重に蹴られるのですが、蹴った瞬間は決まったと誰もが歓喜したことでしょう。その弾丸ライナー気味で蹴られたボールは真っ直ぐとゴールポストに向かって飛んだのですが、低く蹴られたこともあってゴールポスト前で弾道が下がりわずかにアンダーバーの下を通り過ぎて行きました。あまりにも無常な瞬間。

 これでもウェールズは最後のチャンスを奪うためにセンターラインからフランス陣地に入り込む試みを続けます。とにかくボールを保持し続けて相手にペナルティーを犯させるか、デフェンスラインを押し下げてドロップゴールを試みるか2つの選択肢だけを頼りに延々10分間フランスデフェンスラインの前でピック&ドライブを試みました。その数なんと25回。これに対してフランスはタックルの嵐。一旦はフランス陣地10mぐらいまで入り込まれるのですが、どんどんデフェンスラインを上げて、ステファン・ジョーンズのドロップゴール射程範囲には入れさせない。ましてセンターラインぐらいまで押し上げ、付け入る隙を全く見せずにフランスは1点差を守りきりました。

 ウェールズ 8-9 フランス (前半3-6)

 ウェールズ対フランスのゲームハイライトはこちらで見れます。
http://www.rugbyworldcup.com/rugbytracker/match=11231/video.html

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