2008年11月2日日曜日

11/2 ワラビーズ対オールブラックス in 香港 観戦記

香港で初めて行われたブレデスローカップマッチ。両軍の戦いはどこに行っても変わらない激しくいいゲームでした。

 海外ということもあって歓声が少なく雰囲気的にはじっくり見守られているようなゲームで、逆に地元のサポーターからの後押しなどが感じられない分本当の実力で勝負という感じだったと思います。ただやはり湿気が多く、芝も柔らかいようでその点走り回るスピード感のある展開が減って、またスクラムも両軍とも辛そう
でした。

 ゲームは前半ブランクを感じさせないワラビーズの守りのよさと時間の掛けた練習の成果からコンビネーションもよく2つのトライをとってリードしますが、最近2試合と同じように先行されても食らいついて行きゲーム中に調子を上げ続けたABが逆転で勝利してます。

 それでもいつものようにどちらが勝ってもおかしくないような気の抜けないゲームが80分続いた感じでした。お互いこの後のヨーロッパ遠征には弾みがついたように思えます。

 AUSはキックオフから勢いに乗って攻め込みAB陣地に入り込み、ABがボールを回して来るところには強いプレッシャーでミスを誘います。5分にロテ・ティキリに代わり先発に入ったドリュー・ミッチェルがコーナーポスト下にマット・ギットウからの上手いパスを受けて突っ込んでトライをとって7-0と先行。

 その後もAUSの動きは良かったのですが、唯一このゲームで敗因の一つと思われたのがスクラムでした。この日アイルランドの主審は最初のスクラムから両軍のフロントローに厳しく注意を与えてがっちりとしたスクラムを組ませようとしますが、AUSのほうにやや不利に取られることになって後半に掛けてこのセットプレイからはAUSは動きが始まらないようになってしまいました。

 そのスクラムでのペナルティーからABは3点を13分に返しますが、その後のAUSキックオフから一気にABゴール前まで攻め込みます。一旦はAB、AUS陣地にボールを蹴り出してこの日初めての攻めに転じますが、ラインデフェンスにほころびの無いAUSはすぐにボールを奪ってAB陣地に戻します。

 22分にラインアウトでのペナルティーから更に3点をABは加えて7-6と点差を縮めますがこの後のAUSキックオフ後また強いプレッシャーでAB陣地に攻め込みAB陣地22mライン手前右側からラインアウトを得ます。

 いつものようにこのセットプレイからの動きはAUSは強くて早いところを見せて、大きくボールを回しながらもブレイクダウンでは素早くボールを出してどんどんゴールラインに押しあがってきます。そして2人のフォワードがダブルチームで突っ込んで行くのをジミー・カーワンとマッコウが何とかボールライン手間で守って出来たブレイクダウンから素早く出されたボールは左端にまたドリュー・ミッチェルが最後はボールを受けてトライをとります。

 そしてその左端からのコンバージョンキックもギットウが見事に決めて14-6とします。この辺りはAUSいい感じでした。

 けれど相手がデフェンス良くてなかなかブレイクできないときに頼りになるキッカーがいるチームは強い。この日もカーターの判断は素晴らしく30分にセンターライン上でのラックでAUSがペナルティーを犯すとサイドラインに蹴り出すのでは無くて自らゴールを狙うことを決めて、そしてそれを見事に決めます。これでいつでも逆転できる範囲に食らいついて行きます。

 この後AUSがやや優勢な感じで前半が終わりますが、後半入るとまだまだ波乱が続きそうに思えました。

 そのとおり後半入るとABがすぐに波に乗ります。キックオフ後AUSが自陣からボールを回して攻めあがるところにプレッシャーをかけ22m内でラインアウトを得ます。この右側からのラインアウトのボールを(この日敵陣でのABラインアウトはほとんど4人でのショートラインアウトだった)すぐに展開し、2度のブレイクの後中央から左端に向けボールがカーター/コンラッド・スミス/イサイア・トエアバと素早く相手ラインデフェンスがタックルに来ると同時にパスをつなげることで最後シティバツに渡ったところで相手デフェンスを交わしたようになり左端にトライを上げます。

 このコンバージョンキックはカーターが左に外した為14-14の同点となり後半の展開が俄然面白くなるように思われました。

 そのとおりAUSキックオフのボールをジミー・カーワンが目測間違えの後ろにこぼしてAUSにゴールライン手前で捕まえられます。ここでABはペナルティーを犯すのですが、AUSキャプテンのモートロックは3点をキックで取るのではなくスクラムを選択します。

 このスクラムからのボールを珍しくギットウ、モートロックのタイミングが合わずパスミスが出てABスクラムになります。そしてこのゴールポスト前のスクラムでAUSがつぶし、そしてAB陣地内10mでのABスクラムでもAUSは続けてミスを犯してABは守りきります。

 この2つのスクラムの直後にまたミスを犯したAUSに対して主審はかなりきつい注意を与えます。

 後半入って流れがABに向いてきたようになったのに拍車を掛けるように首脳陣もベンチからインパクトの強いものを投入していきます。まずこの日10番に先発したステファン・ドナルドに代えマアア・ノムを投入、カーターがいつもの10番に入り、ノムは2ndFiveに入ります。

 そしてその後すぐに50分にはジミー・カーワンに代えピリー・ウィープを投入。ABの攻撃のリズムがより一層早まり、強かったラインデフェンスを惑わすようになっていきます。51分にはイサイア・トエアバが甘いタックルを掻き分けながら5人抜きの見事なラインブレイクを見せてゴールラインまで迫り、最後にはホセ・ギアーがノムの蹴ったゴロボールに飛び込んでいったのですが、後わずかなところでボールをこぼしたようになってAUSはトライを防ぎます。

 AUSもどうもデフェンスに良くないライアン・クロスに代えベリック・バーンズを投入、モートロックがいつものセンターに入り、バーンズが12番に入り流れを変えようとします。このためかこの後のABの攻撃をとことんAUSは食い止めます。このデフェンスで踏ん張った後のカウンターアタックをかなり心配しましたが、ABもそのデフェンスが後半時間がたつにつれ精度を上げていきました。

 そしてABはついに全員参加の攻撃ラグビーをここで見せ付けます。攻め込まれていた状況を何とか守って自陣の22m内からのドロップオフボールをセンターライン手前で上手くジェロモ・カイノが相手と争って奪い、そのボールをノムが受けコンラッド・スミスにパス。スミスが突進して相手陣地22m手前まで来てからABはラインデフェンス前で右に左に早くボールを動かし続けます。

 何度かゴールラインを脅かす突込みがありましたが、跳ね返されてもボールを保持し続けて左側サイドラインよりでのブレイクダウンからピリ・ウィープ、カーターが大きく中央へ、そして右側へと素早くボールを回してシティベニ・シティバツがボールを取ると3人のデフェンスが彼を取り囲むように迫ってきます。シティバツは機転よく自ら突っ込んでいくのを止め、デフェンスの頭を越すような山なりのパスを右サイドラインよりに上げます。

 このパスが出されたときはパスミスと思われるほどゆるい山なりのパスで、右サイドライン寄りには誰も見当たらなかったのです。しかしこのボールが地面に付きそうになるところに突っ込んできたのがリチャード・マッコウで、地面に落ちる直前にボールを受け、そのまま誰も前にいなくなったゴールラインに向け突っ込みトライをとります。カーターのコンバージョンキックを外れて14-19となります。

 この時点で63分とまだ終了にはかなりの時間が残っていたのですが、68分に簡単に思えたペナルティーキックをギットウが外して、ABのデフェンスもより強くなりAUSの逆襲を守り抜いた形で点数は変わらないまま80分が過ぎていきました。

 ABはゲーム開始直後にフッカーのアンドリュー・ホーが足首を痛めて今後のツアーには参加できないようになりそうですが、他はとてもよさそうです。このゲームがあったからこそこの後のテストマッチに準備が整ったように思えます。


 オールブラックス 19-14 ワラビーズ (前半;9-14)

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