2009年9月13日日曜日

9/13 オールブラックスvsスプリングボックス 第3戦 観戦記

 今の南アフリカ相手に4トライも取れそうに考えた私が甘かったです。南アフリカはまたしてもオールブラックスを今度は地元で粉砕して、2004年以来保持していたトライネーションのカップもさらっていってしまいました。

 これでオールブラックスは南アフリカに3連敗、今年の南アフリカはライオンズ戦も圧勝してこれで名実共に世界ランクNo。1の名誉を誰もが認めることになりました。

 先週のオーストラリア戦を見た後でダニエル・カーターが戻った今年最初の南アフリカ戦だからオールブラックスにも多大な期待を持ったのですが、そのカーターとステファン・ドナルドのコンビネーションはオーストラリアみたいには機能しませんでした。

 まして今年南アフリカでの2戦で見せたゲームの再現を前半は見ているようで、南アフリカはキックボールをうまく使い、オールブラックスはまたしてもラインアウトが壊滅して、ゲーム開始から猛攻を期待していたのも空回りに終わり、前半で4トライ取ることなどは夢だったことが分かり、ただただ南アフリカの強さに感心したり、オールブラックスの逆襲を祈るようになっていました。

 オールブラックスからのキックオフで始まったゲームもそのキックオフボールをキャッチした時点でオブストラクションがあって早速オールブラックスが3点先行しますが、この後前半は南アフリカの良いところばかりが見られます。

 まず何故にオーストラリア戦では彼を使わなかったのか、この日フルバックに入ったフランシス・ステインの長距離砲が炸裂します。南アフリカキャプテン;ジョン・スミットが言う’ロケットランチャー’から蹴り出されたペナルティーキック2本ともセンターライン手前自陣からのキック、一本目は61m、2本目は57m。これであっさり3-6にしてオールブラックスは敵陣に攻め込んでも10mラインを超えるまではペナルティーを犯すことが出来ないことになります。

 その後カーターが2本目のペナルティーキックを決めて6-6にしますが、南アフリカには本来もっと気になるキッカーがいることを思い出させるように10.モーネ・ステインがドロップゴールを軽々と決めて15分には6-9となります。

 このゲームで南アフリカの選手は皆、素晴らしい働きを見せましたが特に目立ったのはこの日ゲーム直前に先発に入るようになった7;シャック・バーガー、8.ピエアー・スピース、3.ジョン・スミット、そしてハーフバックのフォーリエ・デュプリーズでしょう。彼は今世界最高のハーフバックと言われていますが、その実力がこのゲームで十二分に発揮されました。特にラック、スクラム、ラインアウトからのアタックは的確、状況判断が素晴らしい。

 この日のキックボールを上げてオールブラックス陣地に走りこみプレッシャーを与える戦法はこのフォーリエ・デュプリーズからのキックボールが中心となり、それがまた非常に上手かった。激しい攻防の中で彼のあげるキックボールはその滞空時間、落下場所ともこれ以上はないと言ったようなものばかりでした。

 南アフリカ最初のトライは彼があげることになりますが、その突端は彼から上げられたキックボールでした。オールブラックスボールのラインアウトをオールブラックスがミスってデュプリーズが取るとすかさず、敵陣にハイボールを上げる、そしてキャッチャーのロコソコに猛烈チェイス。ロコソコ目測誤ってボールをこぼすと、その後は流れるように4.バッキー・ボッサがボールを拾って、ゴール前まで突進、一旦ラックになるけどそのラックからボールを取り出しデュプリーズがゴールラインにダイブ。これで6-16となります。

 このトライを取られる始まりもそうだったのですが、この日のオールブラックスラインアウトはまたもや壊滅、南アフリカロック陣のプレッシャーに負け、ボールを奪われるか、スローインミスを連発します。それに対して南アフリカのラインアウトはスムーズに決まる。前半南アフリカがラインアウトを成功させたのは14に対してオールブラックスはたったの一回、しかも4回も相手にボールを奪われる始末。これではボールをつなげることが出来ない。実際前半は全くと言って良いぐらいオールブラックスの連続攻撃は見られませんでした。

 トライに結び付けられるようなラインブレイクも前半は全く見られず、フラットラインでのデフェンスにラックやスクラムからのボールもハーフバックからパスを出せても一回だけ、オープンに連続パスや長いパスなどは出せずに相手のタックルにかかるか、隙間の無いデフェンスラインに自ら突っ込んで行っては倒され、シャック・バーガーなどにボールを奪われる結果でした。12番に入るステファン・ドナルドも全く良いところを見せることできず、ただ縦に突っ込んではつぶされるばかりでした。本来彼はこのデフェンスラインに突っ込んでいってもタックルに掛かる直前に上手くパスを出したり、キックボールを転がすことが出来るのですが、南アフリカのデフェンスはとにかく早い。しかも2人以上が襲って来る。プレッシャーを感じてボールを奪われないように倒れこむことが勢一杯といった感じでした。

 20分以降前半終了までに南アフリカはまたしてもフランシス・ステインのセンターライン手前からの52mキックを含めて2本のペナルティーゴールを加え、同じくオールブラックスも2本のペナルティーを加えますが、前半取った12点全てのペナルティーゴールは全てキックオフ直後に南アフリカが犯したミスからのものばかりで、オールブラックスが自陣から攻め込んで得たペナルティーはありませんでした。

 この自陣から攻め込む姿は後半最後にやっと見られることになります。けれどそれがこのゲームでは遅すぎた感じでした。後半はいるとオールブラックスはガンガン攻め込む姿が増えていきます。ノヌやシティバツ、そしてロコソコなどがブレイクする機会も増えますが、強力なデフェンスにボールをこぼすか、密集の中を一人だけ突っ切る結果になってサポートが続かずボールを奪われることが続きます。

 そして前半のセットプレイでのアタックではドナルドが10番、カーターが12番のポジションに着いていたのが機能しないことでドナルドを50分にイサイア・トエアバに変えた直後、カーターが10番のポジションに入った最初のアタックの時に、12.ジーン・デ・ビリエーがお得意のパスをインターセプトして50m独走トライを決めます。

 得点は12-29と開き、直後のカーターからのキックオフボールは大きすぎて、簡単に南アフリカにボールを奪われ、そしてボールを奪って逆襲に掛かる際もリチャード・マッコウがノックオンで流れを止めてしまい、なんだかオールブラックスボロボロになり掛けました。けれど前向きの意識は保たれ、フォワード、バックスが一体となって大逆襲の切っ掛けを作ります。

 まずマッコウのノックオンで得た南アフリカボールのスクラムをフォワードが踏ん張り南アフリカのペナルティーを誘います。そして得たフリーキックからのボールをジミー・カーワンがスファン・ドナルドと代わって入った21.イサイア・トエアバにパス。トエアバはパワフルにそしてすばやく相手デフェンスを突き破り、相手陣地22m内まで来て、後ろからサポートしに来たシティバツにパス、シティバツもパワフルに相手デフェンスにかかりながらもゴールラインまで駆け込みトライを取ります。これで19-29の10点差。これを見る限りではもっと早くトエアバを入れて欲しかったという思いがよぎりました。

 この後56分以降南アフリカからのキックオフ後オールブラックスの大逆襲が見られます。ゲームもすごいものになって行き、激しすぎる攻防がゲーム終了まで続くことになりました。

 けれどオールブラックスだけが勢いに乗ったのではなく、南アフリカもこの後半からいつも始まるオールブラックスの逆襲を予想していたように踏ん張り続けます。ABは相手22mラインまで攻め込みペナルティーを得て、ここはトライ狙いのスクラムを選択します。このスクラムからもう一本のトライを観衆は大いに期待したのですが、南アフリカフォワードはこのスクラムを押し返し、ボールを奪い返します。先週のオーストラリア戦ではこのような場面で南アフリカスクラムはボロボロだったのがこの日は違いました。特にキャプテン3.ジョン・スミットが大きな働きを見せました。

 彼は前半ゲーム開始直後、デフェンスタックルで顔面強打して両穴から出血する鼻血を出しながらも、そして違う場面でもグランドに倒れこむ激突に耐えながら80分間プレーを続けキャプテンシーを見せ付けるゲームをしました。

 このスクラムでボールを奪われたのはオールブラックスには大きなことだったと思えましたが、流れは変わらずオールブラックスのなだれ込むような攻撃は続きます。そして再び22mライン手前まで来たところでペナルティーを得ると今度はしっかりカーターが蹴って3点を加え22-29とします。

 この局面でも南アフリカの攻めのスタイルは変わらず、キックボールをうまく使いラインアウトから攻め込んだり、スクラム、ラックからフォーリエ・デュプリーズが上手くボールを蹴り上げ、この落下地点に怒涛のごとく押し迫ってAB陣地内深くまで攻め込みます。そしてたまらずABがペナルティーを犯すと10.モーネ・ステインが蹴って3点を加えます。70分にはこのように一旦は7点差につめた得点差も再び10点差に戻る22-32となります。

 けれどこの後半最後の30分はABのボールがどんどん繋がるようになって行きました。しかもすばやく。そしてボールを繋ぎ続けた結果、マッコウが逆サイドからカーターが上げたキックボールを受けて左隅にトライを取ります。

この時点で時計は78分。このトライまでの流れも良いのですが、なんと言ってもすごいのはこのトライを取ってからおよそ20秒ほどでカーターがサイドラインからコンバージョンのキックを見事に決めたことです。これにより逆転勝利の希望が断然増えました。

 得点は29-32の3点差、時計は79分。南アフリカからキックオフされたボールはAB陣地22m内と深いところだったのですが、ABはここからボールを回して南アフリカ陣地まで入り込みます。10mラインを超えたところで時計は80分となります。そして22mライン前でデフェンスが右側に偏ったところを見てカーターが再び中央から左端サイドにキックボールを上げます。このボールがキャッチされ、その後はゴールラインまで飛び込んでトライというシーンが待っていたのですが、カーターの蹴ったボールは左端を駆け上がる5.アイザック・ロスの手の上を越える大きなものになりボールはサイドラインを出てしまいます。この時点で主審は終了のホイッスルを吹き、南アフリカの勝利が決定されました。

 オールブラックス 29-32 南アフリカ (前半9-22)

 オールブラックス

 15.マリ・ムレアイーナ 14.ジョー・ロコソコ 13.マアア・ノヌ 
12.ステファン・ドナルド、11.シティベニ・シティバツ 10.ダニエル・カーター
9.ジミー・コーワン

8.キエラン・リード 7.リチャード・マッコウ 6.ジェロモ・カイノ 
5.アイザック・ロス 4.ブラッド・ソーン
3.オーウェン・フランクス 2.アンドリュー・ホー 1.トニー・ウッドコック

 16.Aled de Malmanche 17.ジョン・アフォア 18.アダム・トンプソン
19.ロドニー・ソイアロ 20.ブレンダン・レオナルド 21.イサイア・トエアバ
22.コーリー・ジェーン

 スプリングボックス

1.Tendai・Mtawarira 2.ビスマルク・デュプレス 3.ジョン・スミット(C)
4.バッキー・ボッサ 5.ビクター・マットフィールド
6.HeinrichBrussow 7.シャック・バーガー
8.ピエアー・スピース

9.フォーリエ・デュプリーズ
10.モーネ・ステイン 12.ジーン・デ・ビリエー
11.ブライアン・ハバナ 13.ジャック・フォーリエ 14.オダワ・ングンガニ
15.フランシス・ステイン

 16.ChiliboyRalepelle、17.Jannie du Plessis、
18.ダニエー・ロッソー、19.RyanKankowski、20.リッキィー・ジャニュアリー
21.AdrianJacobs、22.ルーアン・ピエナー


 (オールブラックスvsスプリングボックス 第3戦のゲームハイライトビデオ)

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