2010年6月13日日曜日

6/13 オールブラックス vs アイルランド 観戦記

 今年のオールブラックスは無難なスタートをきりました。そして今回デビューした全てのものが大活躍。大きな収穫があったように思えます。

 アイルランドは後半に持ち前の強さを存分に見せましたが、前半15分に最近のテストマッチではあまり見られないレッドカードで退場者を出して、その後引き続いてイエローカードで13人の時間が10分続きその間にオールブラックスは3トライを取りゲームを決めてしまいました。

 前半は大雨の後の滑りやすいグランドの影響もあってか、またお互いボールキープを主体にゲームを運ぶプランでキックプレイはあまり見られず、面白くなりそうなスタートになります。オールブラックスも心配されたボールハンドリングも悪くなく、バックスのコンビネーションもスムーズ。この日デビューを果たしたフルバックのイスラエル・ダグ、そして12番のベンソン・スタンレー共にデビューとは思われないような攻守にその技量を見せつけTV画面にどんどん出てくる場面を作ります。

 アイルランドはほぼフラットなデフェンスラインを崩さずオールブラックスのアタックを阻みますが、7分にペナルティーキックでカーターが3点先行した後、10分にはアイルランドの連続攻撃途中ノックオンでボールをこぼれたところからコンラッド・スミスが単独個人技で3人のデフェンスと絡み合いながらキック&チョイスで自陣から走り抜けてのトライ結び付けます。

 この後アイルランドはキックオフからAB陣地に攻め込み、ラインデフェンスの前で細かくパスを繋いだり、デフェンスに突っ込んで行ってはラックから直ぐにボールを出してどんどんABのラインを下げていきます。そしてABゴールライン3mほど前まで来たところで12番ゴードン・ダーシーがラインに突っ込みゴールポスト下にトライしたかに思われましたが、リチャード・マッコウなど数名のデフェンスに阻まれラックになります。ここで後ろからラックにサポートに入ったNo.8、JamieHeaslipが主審の目の前でラックに倒れこんでいるマッコウの頭に膝蹴りを2回入れます。すかさず主審はホイッスルを吹きます。この場面実はTV画面では何に対して笛が吹かれたか分からないほど密集の状態になっていたのですが、主審は一旦プレイを停めた後躊躇することなくポケットから赤いカードを出してJamieHeaslipに退場を告げます。これはなかなかビックリの場面。この後TV画面で再生ビデオが流され、観客もみんな納得のレッドカードになりました。しかしこれでアイルランドは14人に、しかもこのゲームではかなり活躍が期待されたNo8を失います。もちろんこのときのトライチャンスは消えてなくなります。

 ここから一気にアイルランドはボロボロになっていきます。21分にバックスの上手いボール回しからアイルランドゴール前まで攻め込んだ後この日フランカーでは一番パワフルな動きを見せたキエラン・リードが左端にボールを押し込みトライ。

 その後直ぐWingのコーリー・ジェーン(彼もこの日の動きは素晴らしかった)とイスラエル・ダグとの見ごたえある連係プレイでの攻撃の中、守りに入ったローナン・オガラがジェーンに抜かれて置き去りにされそうなところでボールを追いかけるジェーンにタックルに入ってしまい、これがイエローカードになります。そしてアイルランドは34分まで司令塔ンオガラを失い13人になります。

 この間にオールブラックスはこの日デビューのベン・フランクスが27分、ジミー・コーワンが30分に、そしてとどめの33分に再びコーワンがトライを取って38-0となります。これら3つのトライには全て影でカーターの上手いアタックが見られて、デフェンスの甘くなった相手にどんどん走りこんでラインブレイクを見せたり、上手くフォワードにパスを繋いで、そのフォーワードがどんどん前に突っ込んで行って相手のデフェンスを崩して、隙間を作ってトライまで結び付けました。

 このオールブラックスの猛攻にアイルランドは怪我人まで出して、先週のゲームでは最優秀選手になった6.JohnMuldoonがひざを痛め、ロックのMickO’Driscollも負傷ベンチに下がります。

 しかしこの後アイルランドはベンチから出てくるものが奮起、そしてハーフタイムを挟んで体制を整えます。まず38-0と大量リードされた34分にオガラがSin-Binから戻ってきて、MickO’Driscollに代わってロックに入ったDanTuohyがキックオフからアイルランドがAB陣地に攻め入った最初のブレイクポイントでその日最初にボールを受けたときに目の前のデフェンスに隙間があることに気づき、そのままABデフェンスをかいくぐり一人でゴールラインまで持って行きトライを取ってしまいます。

 前半終了前にはこの一つのトライでアイルランドは後半に入りますが、後半はなんだか14人の方が強い印象がするほどオールブラックスのデフェンスを崩していきます。特にボールをキープするのが巧み。オールブラックスに全くといって良いほどボールを奪うチャンスを与えません。キックボールは極力避けて、自陣からボールを繋いで攻めあがる。ブレイクポイントもなるべく避けるように細かなパスワークも上手くつながります。

 一旦アイルランドのこのような攻めの途中でパスミスがあってせっかくAB22mラインまで攻め込んだのに一気にこのノックオンのボールをABバックスのカウンターアタックに変えられコンラッド・スミスにトライを謙譲しますが、この後同じような攻撃で後半は3つのトライをオールブラックスから奪うことになりました。オールブラックスにとってはアイルランドに4つもトライを取られたのは初めてだと思います。

 後半3ツもトライを許したのはオールブラックスが前半大量得点リードから控えの選手を全員出したから戦力が落ちたからと思われるかも知れませんが、逆にそのベンチから出てきたものの活躍で後半ABは4つもトライを取っています。

 まず後半からジミー・コーワンに代えピリ・ウィープを投入、47分にコンラッド・スミスがトライを取った直後にはブラッドソーンに代え、サム・ホワイトロックを投入。このホワイトロックがまたパワフルな働きを存分に見せつけ、オールブラックスとしてデビューして直ぐ後のスクラムで相手スクラムを粉砕、そのフリーキックからピリーウィープが速攻、相手が10m下がる前にキエラン・リード、アンソニー・ボリックが突っ込み、最後はこのサム・ホワイトロックがトライまでもって行きます。この後ホワイトロックは76分にもう一つトライを取っています。

 その後カーターがテストマッチにおいて1000ポイント達成のキックを決めた後ベンチに下げられ代わりにアーロン・クルーデンが入ります。このクルーデンもデビューゲームには見られない堂々としたプレイを随所に見せました。

 このカーターが下がった後はキッカーがピリ・ウィープに代わりましたが、ここでこのウィープが何故この6月のテストマッチで選抜されたかが分かったような気がしました。今のABメンバーにはステファン・ドナルド、ルーク・マクアリスター、そしてマイク・ディレイニーといった昨年キッカーを務めたものが一人もいないことからカーターのバックアップとしても選ばれているのでしょう。

 オールブラックスは今年このまま強いところを見せ付けながら進んでいきそうです。来週からのウェールズ戦2戦もトライがたくさん見られそうです。

 またアイルランドはこの後6/18(金)にニュージーランドマオリとゲームを行いますが、これは見ごたえあるものになりそうです。

 オールブラックス 66-28 アイルランド (前半38-7)

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