強い南アフリカが戻ってきました。ワールドカップ直前に本当の南アフリカのスタイルが見られるようになったと感じる今回のオールブラックス戦でした。
オールブラックスは2年前にこのトライネーションで南アフリカ相手に3戦全敗を記しているのですが、そのときの南アフリカを思い出させる強さが18-5でオールブラックスを破ったこのゲームで見られたと思います。テストマッチらしいお互い強力なぶつかり合いの中、南アフリカは超攻撃的なデフェンスを蘇らせ、ブレイクダウンを支配し、そしてスーパーキッカー;モーネンステインのキック力を十分に生かした戦法で全般ではオールブラックスの方が断然攻撃的に見られるのを守って勝ったと言えるゲームでした。
今回のオールブラックスにはマッコウやダン・カーターなどの主力がいなかったわけですが、南アフリカもまだバックスにフランソワ・ステインが、そしてフランカーにシャック・バーガーが出てこれていません。幸いなことにスプリングボックスのレギュラー7番のジュアン・スミスが怪我の回復が見込まれないことからワールドカップに出てこれないことが先週報道されたからまだましですが、このゲームでは一年ぶりのゲーム復帰を先週遂げた6;HeinrichBrussowが更に調子を上げ、大事なところでのブレイクダウンでのボールを奪う姿が見られました。これは2年前にマッコウが入っているチームでさえこのBrussowとシャック・バーガーにとことんブレイクダウンで邪魔されたのを思い出させました。ワールドカップでベストメンバーになる両軍が対戦するのは恐らく準決勝になると思われますが、このゲームを見るとちょっとオールブラックスの決勝進出が不安になってきました。仮にも南アフリカは前回ワールドカップ優勝チームなので2連覇をもくろむのも不思議ではないでしょう。このゲームの結果でこのワールドカップの準決勝ゲームのチケットが南アフリカの人にさらにたくさん購入されそうです。
ゲームは開始から攻撃的に勝るオールブラックスが総攻撃を仕掛け、7分までに2回はトライチャンスがありました。どちらもこのゲームが久しぶりのフルバックに入るイスラエル・ダグの素晴らしいブレイクランやサニー・ビル・ウィリアムス、そしてホセ・ギアー、リチャード・カフイ、イサイア・トエアバが作り出す高速連係プレイが絡んできましたが、最終ラインで南アフリカも初っ端から強力でアグレッシブなデフェンスを見せ付けました。最初のトライチャンスだったジミーコーワンを止めたブライアン・ハバナのタックルを始め攻めあがるデフェンスでABのパス回しにプレッシャーを掛け、そして12.ジーン・デ・ビリエーや13.ジャック・フォーリエがボールを奪っていきました。もう最初からこの南アフリカからトライを奪うのは容易ではないことが分かりました。
そして南アフリカにはモーネン・ステインというスーパーブーツがいることを思い出させるようにこの後から南アフリカの得点は全てステインのキックからになりました。今年のスーパー15とこのトライネーション初戦ではあまり活躍が見られなかったステインのキック力がここに来て輝きはじめました。こうなると南アフリカは守って、守って相手のペナルティーを取ると敵陣なら、ましてセンターライン付近でさえ、そしてどんなにサイドラインよりでもステインならキックで3点を取れるようになります。そのように6分にラックでのペナルティーでまず3点、その後8分と16分にスクラムでのペナルティー2つで9-0とリードします。この3本のキックは全てセンターライン付近からの長距離キックを難なく決めました。
その反面オールブラックスの10番コリン・スレイドはやっと相手から得たペナルティーも40mの距離だったのですが、わずかに外してしまいます。これが印象的だったのでスレイドのプレイはそれまでチームプランにあわせたキックプレイが多いものだったのですが、どうしてもそのプレイが弱々しいものに見られました。なんだか相手のプレッシャーから逃げのキックプレイに思えるようになりました。ヤッパリスレイドではまだ南アフリカ、そしてワラビーズレベルでは通用しないでしょう。これではNZ国内リーグで活躍が見られているアーロン・クルーデンに代えろという声が聞こえてきそうです。
この辺りからABのアタックが滞りを見せ始め、スプリングボックスのデフェンスのプレッシャーの前にとにかくワンテンポほど出だしが遅く感じられるようになります。特にブレイクダウンで南アフリカはなるだけ手を出してはジミー・コーワンがすばやいオープン攻撃に展開できないようにさせます。またボールを展開させても3度目のパスにはしっかり1対1のタックルが襲ってきます。
前半24分になってこの日初めて南アフリカはAB陣地22m内に入るアタックが見られ、ここでもゴールポスト下ラックでのペナルティーから易々とステインが3点を追加し、そして直後に再び22m内に押し入った際は今度もまたステインの本来の姿を思い出させるドロップゴールを決められ30分には15-0となります。
なんとしても前半終了までに得点したいABはやっとのことで35分、ラインアウトからのセットプレイで見事にバックス(サニー・ビル・ウィリアムス/ホセ・ギアー)がラインブレイクを見せ、最後はリチャード・カフイが相手デフェンス3人と絡まりながらもトライを取りました。しかしこの後のコンバージョンをスレイドは外してしまい、15-5と10点差にするだけで前半を終了させます。このときも見られたのですが、南アフリカのデフェンスのプレッシャーがきつくてどうしてもバックスのパスを繋ぐことが出来ず、やたらとデフェンスラインに突進して行っては強力タックルに跳ね返されたり、ブレイクダウンになってボールが奪われたり、スローフォワードになったりしていたのですが、サニー・ビル・ウィリアムスだけはデフェンスラインに突っ込んで行っても、タナ・ウーマンガ譲りの後ろ手にボールをパスが出来たりして、密集の中での、タックルを受けながらのパスが上手く出せます。これは今後も彼がゲームで使われる大きな要因になりそうです。ちなみにこんな強力ラインブレイクを任されるマアア・ノヌはこの日ウォーターボーイとしてピッチを走り回っていました。
後半入ってもABの攻撃は緩められず、また南アフリカの最後まであきらめない執拗過ぎるデフェンスは続けられます。何度もABのアタックはゴールライン手前で食い止められます。47分に自陣でラックからのボールを受けたイスラエル・ダグが再び見事なカウンターアタック。デフェンスを突っ切り、左サイドラインよりを相手ゴールラインに向け独走態勢になります。これに追いすがるのが前半途中からパット・ランビーに代わりベンチから出てきてWingに入るフランシス・ホガードで、何とかダグは逃げ切れるかと思われたのですが、ゴール手前でホガードにつかまります。そしてダグは倒されながらもサポートに来たジミー・コーワンにパスを出し、コーワンはトライを取ったかに思えましたが、この最終パスがフォワードパス。パスを出したところで分かったのですが、主審はコーワンがちゃんとゴールラインを越え、ノックオンせずにタッチダウンできたかどうかビデオレフリーにジャッジをゆだねます。このビデオレフリーが本来はゴールライン手前のことにはジャッジの権限が無いにも関わらずこのフォーワードパスまで主審に伝え、このトライは無効になりました。まあこのジャッジはビデオレフリーになる前からトライではないことが分かっていたからいいものですが、このシーンもレフリーしだいで勝敗がガラッと変わることを思い出させるものでした。
この後の南アフリカゴール前5mのスクラムも南アフリカは無難に支配しピンチを脱したのですが、このスクラムも南アフリカは先週のオーストラリア戦とは違ってちゃんと修正、そして強力なものへと進化させていました。それに比べてトニー・ウッドコックがこの日60分までピッチに出てましたが、まだ全盛期のそれに戻っていなくて、ABのフロントローがまだ固まっていないことへの不安が少し残りました。
この60分にはコリン・スレイドに代えピリ・ウィープを投入するとバックスの動きはよりデンジャラスで多彩な攻撃が出るようになりました。しかし最後の最後で、ゴールライン手前で南アフリカのデフェンスを崩せない状態が続きました。まして後半になるとモーネン・ステインのキックプレイにもなんだか余裕さえ感じられるようになり、ちゃんとABのカウンターアタックをさせないようなロングキックやハイパントを随所に見せました。そしてブレイクダウンでも最後まで南アフリカは支配を続け、特に前半で眉間を切って流血した6.HeinrichBrussowの動きが緩まることが無くABの焦りを募るようになり、特にこの日活躍が期待された7番に入るアダム・トンプソンが逆に動きすぎるほど動いた結果、後半には両軍にとって唯一の得点となったペナルティーキックをステインに与え18-5で南アフリカはオールブラックスを破ったゲームとなりました。
南アフリカ 18-5 オールブラックス (前半15-5)
2011年8月21日日曜日
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